UCLAカリフォルニア・ナノシステム研究所と学術交流協定を締結

2010年3月24日

 カリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)カリフォルニア・ナノシステム研究所(CNSI)と京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)は日本時間2010年3月16日(米国東部夏時間15日)、学術交流協定の調印式をCNSIで執り行いました。

 ポール・ワイスCNSI所長は次のように語っています。「この学術交流協定を締結することによって、CNSIは共同研究や学術交流を通じてiCeMS並びに京都大学との関係を深めることになる。iCeMSとの関係強化で、CNSIの研究は大きく進展するだろう。再生医学や薬物送達に大きな影響をもたらすことが期待されている細胞科学・物質科学の分野において、iCeMSは既に画期的な研究を進めている。」

 この学術交流協定では、共同研究プロジェクト、研究者の相互短期派遣プログラム、研究会やワークショップの共同開催等の、国際協力について定めています。

 iCeMSとCNSIはこれらの共同研究や学術交流を通じ、次代を担う若手研究者育成の一環として、科学コミュニケーションスキルや国際社会リテラシーの向上を目指します。

 中辻憲夫iCeMS拠点長は、CNSIとの学術交流協定の締結は互恵的な学際共同研究につながると考えています。「この協定によって、iCeMSにおける研究の質が向上し、また世界の研究者コミュニティにおけるCNSI・iCeMSの存在はより大きなものになる。日本が科学技術の分野で世界をリードし続けるためには、これらは不可欠な要素と言えるだろう。」

 CNSIとiCeMSは、幹細胞研究、新たな薬物療法や薬物送達、新たな化合物の開発、持続可能なエネルギー資源の開発のため、分子間相互作用の解明を進めているという点において、強く共通しています。

 ナノ空間における先端研究の中心的存在として世界をリードしてきたCNSIと、ナノとミクロンの間のメゾ空間(5~100nm)における融合研究を推進するiCeMSが協力することにより、マテリアル(物質)から生きた細胞に至る領域の生体分子レベルでの解明・制御に大きく寄与する事が期待されます。その実例としてオマール・ヤギCNSI教授北川進iCeMS副拠点長による共同研究プロジェクト「多様な機能を持つ細孔材料の合成」と、ジェームズ・ギムゾウスキーCNSI教授上野隆史iCeMS准教授による共同研究プロジェクト「メゾ分子デバイスを指向した蛋白質集積制御」が既に始動しています。また、2010年6月13~14日にはCNSIにて合同セミナーの開催も予定されています。

 この協定は科学のグローバル化に対するCNSIのコミットメントを反映するものです。CNSIはアジアや欧州の大学・研究機関と連携を強化し、ナノ・テクノロジーの世界的な先駆者であることを目指してきました。現在、中国、日本、シンガポール、韓国、イギリス、オランダの研究機関と交流協定を結んでいます。




ニュースリリース(PDF)

左からレオナルド・ロームCNSI副所長、ポール・ワイスCNSI所長、中辻憲夫iCeMS拠点長、富田眞治iCeMS事務部門長
 

iCeMS本館にてテレビ会議で
調印式に遠隔参加したiCeMS研究者ら

松本紘京都大学総長による祝辞
(ビデオメッセージ)

CNSIについて

 カリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)カリフォルニア・ナノシステム研究所(CNSI)は、UCLAと同大学サンタバーバラ校(UCSB)が共同運営する総合研究所です。

 CNSIが掲げるミッションは、ナノシステムとナノ技術の新発見を目指して学際融合研究を推進すること、次世代の科学者・教育関係者・科学技術分野のリーダーを育成すること、産学連携を通じてカリフォルニア州、アメリカ、そして世界全体の経済の発展と社会福祉に寄与することです。

 カリフォルニア州が1億ドルを拠出し、米国政府と産業界からの2億5千万ドルの追加支援を受けて2000年に設立したCNSIでは、生物学、化学、生化学、物理学、数学、コンピューターサイエンス、工学分野の研究者たちが、私たちの世界のあらゆる物質を構成する原子と分子を測定、変化、操作する研究を行っています。CNSIの科学者は、その多様性を育む研究風土の恩恵を存分に受け、衛生、エネルギー、環境、ITの分野で革新的発見につながるナノスケールの研究をダイナミックに行っています。
UCLAカリフォルニア・ナノシステム研究所(CNSI)

iCeMSについて

 京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)は文部科学省の「世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラム」に採択され、2007年10月1日に設立されました。

 iCeMSでの研究は「幹細胞」と「メゾ制御」をキーワードとしています。メゾとは、ナノとミクロンの間に存在する空間(5~100nm)です。細胞は進化の過程でメゾ空間をうまく利用してきました。細胞をモデルとしてこの空間に見られる物質間相互作用のメカニズムを理解し、さらに人工的な化学物質などで現象をコントロール(メゾ制御)することによって、iCeMSは細胞科学と物質科学の融合による新たな学際領域を創出するとともに、再生医学の発展、新たな化合物の開発、体内での解毒と薬物合成など、次世代の技術イノベーションを生み出すことを目標としています。

 iCeMSには細胞生物学、化学、物理学の第一線で活躍する18名の主任研究者を含め154名の研究者が所属(2010年3月現在)し、英語公用化やオープンオフィス・共用実験室の導入による異分野研究者間の交流促進といった、従来の発想にとらわれない運営を行っています。


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