古川修平准教授、北川進教授ら、「ちえのわ」型ナノ細孔を用いたセンサー開発に成功:動き、捕まえ、光って知らせるナノ多孔体 [Nature Communications]

2011年1月26日

 JST課題解決型基礎研究の一環として、北川進 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)副拠点長・教授、古川修平iCeMS准教授・JST戦略的創造研究推進事業ERATO型研究「北川統合細孔プロジェクト」グループリーダー、高嶋洋平 元京都大学 大学院工学研究科 博士課程・現英国グラスゴー大学 博士研究員らの研究グループは、分子の微妙な違いを発光色で区別できる多孔性物質*1を開発することに成功しました。これは、全く新しい分子センサーとしての応用が期待されます。

 今回開発に成功した多孔性物質は二つのナノメートルサイズのジャングルジム骨格が「ちえのわ」のように絡み合った構造を有しており、この多孔性物質が捕捉する分子の大きさ・形に応じて絡み合う構造が変化することを結晶構造解析によって明らかにしました。ナフタレンジイミドと呼ばれる有機物質をこの多孔性物質の壁に用いることで、揮発性有害有機化合物(VOC)*2や有害大気汚染物質として知られるベンゼン類(ベンゼン、トルエン、キシレンは特に三大有害大気汚染物質として知られている)を取り込むことに成功し、これら非常に似通った分子構造を持つベンゼン類を発光色(紫から赤までのすべての色)によって区別可能であることを発見しました。これは「ちえのわ」型構造が動きながら分子を捕捉するため、ナフタレンジイミドとベンゼン類が非常に強く相互作用していることによるものでした。従来のセンサーは特定の分子をターゲットにしていましたが、本研究で開発した多孔性物質を用いることにより、化合物群を色で識別するという全く新しい発光センサーの作成が可能になります。

 この画期的な成果を応用することによって、大気汚染物質を簡単に調べることが可能になり、人類の健康と関係の深い大気環境のモニタリングと改善に貢献する材料開発につながるものと期待されます。本研究はバスク大学(スペイン)のビルジニア・マルティネス博士と共同で行われ、本論文はロンドン時間2011年1月25日(日本時間26日)に英オンライン科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で公開されました。


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文献情報

Extenal LinkMolecular decoding using luminescence from an entangled porous framework

Yohei Takashima, Virginia Martínez Martínez, Shuhei Furukawa, Mio Kondo, Satoru Shimomura, Hiromitsu Uehara, Masashi Nakahama, Kunihisa Sugimoto, and Susumu Kitagawa

Nature Communications, 2, no. 168 | DOI:10.1038/ncomms1170
Published online January 25, 2011


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独立行政法人 科学技術振興機構(JST)
Extenal Link「ちえのわ」型ナノ細孔を用いたセンサー開発に成功 ― 動き、捕まえ、光って知らせるナノ多孔体 ―


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