京都大学、アメリカ科学振興協会(AAAS)年次大会に出展

2011年2月22日


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来場者に研究の紹介をする
古川修平iCeMS准教授(北川進グループ)

 京都大学を含む国内11機関が、米国ワシントンDCで2月17日から5日間にわたって開催されたアメリカ科学振興協会(AAAS)年次総会に、ジャパン・パビリオンを出展しました。

 AAASは世界最大の総合学術団体で、米科学誌「サイエンス」を発行し、科学の発展と社会還元を目的としています。1848年から続いている年次総会には例年約50ヵ国から8,000人ほどが来場し、そのうち約4割が研究者です。他にも家族連れや中高生、政府関係者、ジャーナリストといった多様な層が参加します。

 今回は、170を超える様々なテーマのシンポジウム・ワークショップに加え、企業・大学・政府機関によるブース展示、家族向けの体験型イベント「ファミリー・サイエンス・デー」、高校生以上による研究ポスター発表、各分野の最新の成果や動向についての記者会見などが行われました。


ブース展示(主な対象:一般、大学関係者、政府関係者)

 18日から3日間、企業・大学・学会・政府機関など約120の機関がブースを設けて事業内容を紹介しました。

 京都大学は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、科学技術振興機構(JST)、慶應義塾大学、東海旅客鉄道(JR東海)、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)、日本原子力研究開発機構(JAEA)、日本学術振興会(JSPS)、日立製作所、理化学研究所(RIKEN)、立命館大学と共同でジャパン・パビリオンを出展し、のべ500名以上が来場しました。

 京都大学のブースでは以下8枚のパネルを掲示し、各研究を紹介するDVDを併せて上映しました。


ファミリー・サイエンス・デー(主な対象:家族連れ、中高生)


ACSブース:実演する係員は、普段は大学で化学の講義を
受け持つ教員。ボランティアで参加していた。

 例年は約2,000人が来場する、家族向け体験型イベントです。今年は19日から2日間、約30の機関が、科学に関するゲームや簡単な実験を出展しました。アメリカ化学会(ACS)のブースでは、

1. 画用紙の上にひげ剃りクリームを乗せる
2. 好きな色のインクを選んで4滴だけその上に垂らす
3. 木の串でかき混ぜてからクリームを拭き取る
4. 画用紙にはペイントアートができ上がっている

という遊びを提供していました。なぜそうなるかを聞かれた時だけ、紙と「仲が良い」のはクリーム(油性)ではなくインク(水性)であることを数秒で簡単に説明していました。

 多くの子供たちは、自分で作った作品を持って帰りました。その紙の裏には「もっと科学する?」というようなキャッチコピーとともに、同学会の子供向けウェブサイトのURLが書かれていました。


できあがった作品(左)とその裏面(右)

 特設ステージでは、約20の機関による参加型デモンストレーションがありました。米カーネギーメロン大学は「コンピューター・サイエンス・ロードショー」と題し、子供たちをステージに上げ、寸劇を通してアルゴリズムやプログラミングの疑似体験をさせていました。

 最後に、コンピューターの勉強をする事で将来どんな進路が考えられるかについて、IT系以外にも有名な企業をいつくか挙げ、収入面まで含めて紹介していました。


シンポジウム(主な対象:研究者、政府関係者、メディア)

 今年の大会テーマである「Science Without Borders(境界なき科学)」を基本コンセプトとし、「脳と行動」「気候変動」「教育」「新たな科学・技術」「エネルギー」「国際連携」「人体の生命と健康」「地質と海洋」「科学の課題」「科学と社会」「安全」「サステナビリティ(持続可能性)」の12分野・計約170テーマが用意されました。

 個々のテーマを3~6名が異なる切り口で講演し、質疑応答を含めて1時間半~3時間で1つのシンポジウムとなります。今回「神経変性疾患における学際的・国際的アプローチの必要性」をテーマとしたシンポジウムでは、ドイツ・アメリカ・スウェーデンの研究者がアルツハイマー等の難病について最新の知見を発表していました。


ワークショップ(主な対象:研究者)

 大学院生やポスドク(博士研究員)のキャリア形成や、社会と科学をつなぐアウトリーチ活動、政府関係者との効果的なコミュニケーション法など、実践的なテーマについて2~3名が1時間~1時間半かけ、それぞれ異なるアプローチの発表をします。

 シンポジウムでも質疑応答は盛んに行われますが、ワークショップではより双方向性に重点を置いています。参加者から実際に直面している課題を聞き出し、ケーススタディとして全員で共有して議論する局面もありました。


ポスター発表(主な対象:研究者、大学生、高校生、一般)

 アメリカ科学ジュニアアカデミー(AJAS)に所属する高校生、大学生・大学院生、ポスドク・研究者の3つのカテゴリーに分かれ、それぞれの研究内容をポスターで説明します。

 AAAS年次総会で発表をする事ができるポスターは、高校生の部ではアメリカ各州のAJASで選出されたもの、その他の部では提出された中でAAASの選考委員に認められた約6割のものに限ります。


記者会見(対象:メディアと広報担当者のみ)

 会場内の別室で、第一線の研究者らが30分間ずつ、各分野の最新の成果や動向について発表し、質問に答えます。発表内容は同日に報道解禁となるため、すぐに記事になる事も少なくありません。

 今回、米マサチューセッツ工科大学(MIT)と米イェール大学の研究者らによる、エネルギー政策におけるレアアース等の物質についての発表では、その日のうちに米紙ニューヨーク・タイムズ米紙ワシントン・ポスト米誌タイム英科学誌ネイチャーなどが記事にしました。


文・写真:飯島由多加