楠見明弘教授・Satyajit Mayor教授ら、科学技術映像祭で優秀賞に選出

2011年4月22日


楠見教授
 

Mayor教授
 

 日本科学技術振興財団、映像文化製作者連盟、つくば科学万博記念財団は22日、第52回科学技術映像祭の表彰式を挙行しました。研究開発部門では、科学技術振興機構(JST)が企画し、NHKグローバルメディアサービスが製作した作品「1分子で見る細胞膜の世界:国際共同研究『膜機構プロジェクト』の挑戦」が優秀賞として選出されました。

 同作品は、細胞膜上のタンパク質や受容体の働きを1分子追跡法を用いて細胞膜のメカニズムを解明する、JST国際共同研究(ICORP)膜機構プロジェクト(研究総括:楠見明弘教授、インド国立生命科学研究センター(NCBS)Satyajit Mayor 教授)の研究内容と成果を解説するものです。

 今回の映像祭では、テレビ局や研究機関などによる67の作品のうち、10点が優秀賞として選ばれました。最優秀賞となる内閣総理大臣賞には、毎日放送による作品「クニマスは生きていた!:"奇跡の魚"はいかにして「発見」されたのか?」が選出されました。
 

DVDライナーノーツ

 ラファエロ作システィーナのマドンナの天使が不思議そうに見やっているのは... 細胞の中のシグナル分子や足場タンパク質が、細胞膜の活性化分子のところに、拡散運動でやってくるところかも知れません。彼らが液体の細胞膜中で掴まっているのは、アクチン線維が作る膜骨格です。細胞膜は、膜骨格の網目とそこに結合した膜タンパク質によってコンパートメントに仕切られています。私たちも、まさにこの天使たちのような観察と悪戯をすべく、超高速超分解の1分子追跡法を開発し、生細胞を観察しています。

 このビデオは、我々の研究のスポンサー、科学技術振興機構が運営しているサイエンスチャンネルでのweb放送用のために作られたものです。そのため、単純化しすぎていたり、引用が不十分な部分があったりしますがお許し下さい。

 お楽しみいただけることを期待しています。

楠見明弘 サティアジト・メイヤー
膜機構プロジェクト一同

受賞のコメント

楠見明弘
 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)教授
 京都大学 再生医科学研究所 教授

「百聞は一見にしかず」という言葉は、科学技術映像祭の趣旨をよく表しています。私たちは細胞の中で働いている分子を、「1分子」ずつ「見る」という、ちょっと変な「一見」をしてきました。

 細胞を包む細胞膜は、他の細胞とお付き合いするための最前線にあり、まるでコンピューターのように働いています。しかも、地球上のすべての細胞膜には「2次元の液体」というとても変わった特徴があります。液体ですから、その中で、分子は動き回っては、くっついたり離れたり集まったり、を繰り返し、それが「計算」となって結果を出力します。

 このような分子の動きを1分子ずつ見て追跡できると、膜が働く仕組み、すなわち「膜機構」が解るでしょう。ビデオ制作に携わった全員が、「一見」する面白さと迫力をお届けしたいと努力しましたので、賞を頂けたのは格別の喜びです。有り難うございました。
 

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