村上達也助教・今堀博教授ら、カーボンナノチューブの新たな光応答性を発見:癌に対する光治療法の開発に期待 [JACS]

2012年10月19日

 国立大学法人 京都大学(総長:松本紘)は、単層カーボンナノチューブの新たな近赤外光応答性を発見しました。この成果は、癌に対する光治療法の開発に寄与することが期待されます。

 村上達也同物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)助教・iCeMS京都フェロー、今堀博iCeMS教授らの研究グループは、橋田充iCeMS・薬学研究科教授、磯田正二iCeMS客員教授、辻本将彦iCeMS研究員らと協力し、半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWNT)が、生体に優しい近赤外光の照射によって活性酸素種(※1)を効率良く生成し、さらにその活性酸素種が癌細胞を死滅させることを発見しました。これまで、SWNTの発熱作用が、癌の光線治療メカニズムとして注目されてきましたが、本研究では、SWNTが熱だけでなく活性酸素種も用いて癌を死滅させることを明らかにしました。今後、半導体性SWNTは、これら2つのメカニズムで癌細胞を死滅させるナノ材料としての活用が期待されます。

 本成果は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費 基盤研究(B)研究課題「Extenal Linkナノ細胞工学:ナノ材料の細胞内精密配置と機能発現」(代表者:村上達也)の一環として行われました。論文は米国東部時間10月19日に米科学誌「アメリカ化学会誌(Journal of the American Chemical Society = JACS)」オンライン速報版に掲載されました。

続きを読む(ニュースリリースPDF: 622KB)


文献情報

Extenal LinkPhotodynamic and Photothermal Effects of Semiconducting and Metallic-Enriched Single-Walled Carbon Nanotubes
Tatsuya Murakami*, Hirotaka Nakatsuji, Mami Inada, Yoshinori Matoba, Tomokazu Umeyama, Masahiko Tsujimoto, Seiji Isoda, Mitsuru Hashida, Hiroshi Imahori*
Journal of the American Chemical Society (JACS) | Published online 19 October 2012 | DOI: 10.1021/ja3079972
 


関連記事・報道