植村卓史准教授・北川進教授・松井宏教授ら、水面を泳ぐ化学モーターを生体から学んで開発:光や温度に応じて物質を運ぶ分子ロボットの開発に期待 [Nat Mater]

2012年10月29日
国立大学法人京都大学(総長:松本紘)とニューヨーク市立大学(CUNY)ハンター校(総長:ジェニファー・ラーブ)の研究グループは、多孔性物質(※1)からの疎水性分子の放出を駆動力とすることで、水上を長時間、高速に"泳ぎ続ける"新しい化学モーターの開発に成功しました。
北川進 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)副拠点長・教授、植村卓史 同大学院工学研究科 准教授、
松井宏ニューヨーク市立大学ハンター校教授・iCeMS客員教授らの研究グループは、多孔性金属錯体(MOFもしくはPCP、以下MOFという)の細孔から疎水性ペプチド分子が放出されることでできる表面張力の勾配により、水上を高効率で運動する新しいモーター材料を開発しました。この研究では、非平衡状態を利用する生体(細胞、タンパク質など)の運動原理を参考にすることで、従来の人工材料に比べ単位体積あたりで30倍以上の速度、運動エネルギーは2倍以上の効率で運動エネルギーに変換できました。本成果を応用する事で、省エネルギー・低環境負荷で駆動する新しい化学モーターの作成が可能になり、光や温度など外界の変化に敏感に応答して物質を輸送する材料や分子ロボットの開発につながるものと期待されます。
本研究成果は、ロンドン時間10月28日に英科学誌「Nature Materials(ネイチャー・マテリアルズ)」オンライン速報版で公開されました。
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文献情報
New autonomous motors of metal-organic framework (MOF) powered by reorganization of self-assembled peptides at interface
Yasuhiro Ikezoe, Gosuke Washino, Takashi Uemura, Susumu Kitagawa, Hiroshi Matsui*
Nature Materials | Published online 28 October 2012 | DOI: 10.1038/NMAT3461
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