中辻憲夫教授、iCeMS研究者ら、世界幹細胞サミットで日本勢を主導

2013年12月21日

 京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)は、12月4~6日にマンチェスター グランド ハイアット サンディエゴにて世界幹細胞サミットを共催しました。世界幹細胞サミットは、バーナード・シーゲル氏によって設立された非営利団体ジェネティクス・ポリシー・インスティチュート(GPI)の主催により2008年から例年開催されています。本イベントは、幹細胞研究および再生医療の更なる発展のために、研究者のみならず、患者団体、企業関係者、政策立案者、倫理専門家らのネットワーキング構築を目的とし、今年も40か国以上から約1300名の幹細胞研究関係者が参加しました。

 iCeMSの呼びかけにより参加した研究者および産業界リーダーは、3日間のイベントを通じ注目を集めました。シンポジウム「日本の幹細胞オープンイノベーション:幹細胞の大量培養と品質管理における産学連携」において、日本のパネリストはiCeMSとの共同研究成果である、細胞の評価と創薬に役立つ画期的な製品や技術を紹介しました。講演には中辻憲夫iCeMS教授・設立拠点長、横山周史株式会社リプロセル代表取締役社長、北川正成タカラバイオ株式会社執行役員、高橋正明ジェネテイン株式会社取締役社長、福島雅夫住友ベークライト株式会社S-バイオ事業研究部長が登壇し、その様子は世界中の視聴者にライブ映像としてウェブ配信されました。

 その後、斎藤通紀教授が幹細胞の臨床的意味について講演を行い、亀井謙一郎助教、長谷川光一講師がポスターセッションで研究内容に関する意見交換を行いました。京都大学iPS細胞研究所(CiRA)からは高橋淳教授が参加し、パーキンソン病についてのセッションで講演しました。淺田孝iCeMS特任教授はポスター審査員を務めたほか、将来的なビジネスおよび学術連携協定を結ぶため、iCeMSブースにて個別の訪問に応対しました。

 GPI代表シーゲル氏は、世界幹細胞サミットを共催したiCeMSについて、「中辻教授およびiCeMSの尽力により、昨年にも増して日本から多くの参加者を迎えることができたことは大変光栄です。世界幹細胞サミットにおいてiCeMSの存在は大きく、これからも共催機関としてiCeMSのリーダーシップを発揮してくれることを期待しています。」と述べました。

 米国国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH) のマヘンドラ・ラオ再生医療センター長は、「世界幹細胞サミットにおいてiCeMSが果たした役割は素晴らしかったです。日本が主体となってこのような催しを開催することで、日本の成果が幹細胞コミュニティに認知されることでしょう。」と述べました。

 12月5日に開催された表彰夕食会では、科学・生物医学分野の出版社であるMary Ann Liebert社のCEO、Mary Ann Liebert氏がジャーナル発行により幹細胞研究に貢献したとして、また実業家であると同時に慈善家としても有名なデニー・サンフォード氏も医学の発展のためにこれまでに8億5000万ドル以上を寄付してきたとして表彰されました。黒木登志夫世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)プログラムディレクターも会に参加し、冒頭に紹介されました。

 中辻教授と以前から親交があり、GEヘルスケアの細胞技術の研究開発においてグローバルヘッドである スティーブン・ミンガー博士は、「この会議は、普段はなかなか出会うことのない人々を結びつけるユニークな催しだと感じています。今回で私の参加は4度目ですが、参加できたことを嬉しく思います。患者団体と科学者の距離を縮めることこそ、科学を推進するにあたって重要だと感じていますので、世界幹細胞サミットの主催者であるGPIに敬意を表します。」と語りました。

 中辻教授は「GPIと連携で世界幹細胞サミット2013を開催できたことは大変光栄です。日本からの派遣団は、幹細胞分野において我々がこの数年間でどれほどの進展を遂げてきたかを示す、素晴らしい機会を得られました。再生医療分野の更なる発展において、日本が今後も中心的な役割を担うことを期待しています」と述べました。

 次回の世界幹細胞サミットは、テキサス州サンアントニオのマリオット・リバーセンターにて2014年12月3日~5日に開催予定です。


写真


会場:マンチェスター グランド ハイアット サンディエゴ
 

iCeMS・日産化学工業のブースでミーティングを行う中辻教授(左から3番目)と淺田iCeMS特任教授(右)
 

主催機関GPIおよび共催機関(スクリプス研究所、カリフォルニア再生医療機構、京都大学iCeMS)の代表者ミーティング
 

開会の挨拶を行う中辻教授

 

初日午前のセッションでスピーチを行う岡野光夫東京女子医科大学副学長・教授および日本再生医療学会理事
 

GPIのアラン・フェルナンデス氏(中央)のインタビューに答える中辻教授(左)
 

「エキスパートランチョン」にて参加者と意見交換をする仙石慎太郎iCeMS准教授 (右)
 

iCeMSブースで産業界リーダーに応対する淺田iCeMS特任教授(左から3番目)
 

特別セッション「日本の幹細胞オープンイノベーション:幹細胞の大量培養と品質管理における産学連携」を前にくつろぐ日本のパネリストたち。左から、中辻憲夫iCeMS教授、横山周史株式会社リプロセル代表取締役社長、北川正成タカラバイオ株式会社執行役員、高橋正明ジェネテイン株式会社取締役社長、福島雅夫住友ベークライト株式会社S-バイオ事業研究部長
 

パーキンソン病についてのセッションで講演を行う高橋淳CiRA教授
 

幹細胞の臨床的意味についての議論に、パネリストの1人として参加する斎藤通紀iCeMS教授(左から2番目)
 

ポスターセッションで自身のポスターの説明を行う亀井謙一郎iCeMS助教
 


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