第1回How to学際融合 を開催しました

2014年3月1日

 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)は、2012年6月1日に、第1回How to 学際融合「異分野の研究者と連携して新たな学問領域を創造する」を開催しました。大学院生向けのセミナーとして企画されたもので、学内の大学院生の他に、学部生や研究員なども交えた30名の方にご参加いただきました。

 iCeMSは物質科学と細胞科学を統合して、新しい学際領域を創り出すことを目指しています。そのため、物理学、化学、細胞生物学など様々なバックグラウンドを持つ研究者が集っています。今回の「How to 学際融合」では、iCeMSで今まさに進められている学際融合研究の中のある1プロジェクトに注目しました。

 この日登場した若手教員は、古川 修平(iCeMS 北川 進グループ ・准教授)、亀井 謙一郎(iCeMS Chen, Yongグループ・ 助教)、王 丹(iCeMS・ 准京都フェロー)、山本 真平(iCeMS 高野 幹夫グループ・ 助教)の4名でした(所属・役職は、セミナー開催当時のもの)。この4名で、今まさにある学際融合研究を進めています。どのように新しい分野に挑戦するべきか、異分野の研究者とどのように連携するべきか、などを語り合いました。

 今回のセミナーの大きな特徴は、学際融合研究を「アポロ計画」に例えながら紹介したところです。アポロ計画では、1961年にアメリカ合衆国のケネディー大統領が出した声明が、プロジェクトの推進に大きく影響しました。それは、「1960年代のうちに人類を月面に着陸させる」というものでした。さて、このセミナーに登場した4人が関わっている学際融合研究プロジェクトでは、ケネディー大統領に相当する人はいたのでしょうか?「人類の月面着陸」に相当するものは、何だったのでしょう?

 このセミナーを開催した頃には、まだ論文として研究成果が公開されていなかったため、研究の詳細が語られることはありませんでしたが、アポロ計画に例えて話を進めるうちに、この4人が学際融合研究を進めることができた重要なポイントがいくつか分かりました。それは、1)パートナーをみつけることができた。2)メンバーみなが、過去に専門分野を変えて、新しい世界に飛び込んだ経験をもっており、分野によって研究のやり方や研究に対する考え方が違うということが分かっていた。3)自分たちにとってのメリットだけでなく、相手のメリットにも気を配ることができるというWin-Winの関係を築くことができた。ということでした。

 参加していた学生からは、このセミナーで学んだこととして、次のようなコメントを寄せてくれました。

“研究者が一人では乗り越えられない研究上の壁も、他分野の人と組むことで乗り越えられること。”

“別分野に対しても常にアンテナをはっておくこと。 ”面白いね”の一言で引き出す相手の話をたくさん聞くこと。”

 研究成果も徐々に公開されているので、いつの日か再びこのメンバーで集まって、もっと具体的な話を聞くことができればと思います。

注1:
『京都大学 by AERA 知の大山脈、京大。(朝日新聞出版)』の中に、本セミナーの関連記事が掲載されています。

注2:
後日、今回の第1回How to 学際融合で取り上げた学際融合研究の成果として、次の論文が発表されました。
光でガス分子を自在に取り出せる空間材料を開発 -記憶形成・血管拡張など、細胞内NOガスの謎を知るカギに-」(2013年10月25日)


文: iCeMS科学コミュニケーショングループ
写真:iCeMS国際広報室 今羽右左 デイヴィッド 甫


講演中の様子(左から:加納圭、王丹、古川修平、亀井謙一郎、山本真平、水町衣里)
 
講演者 古川 修平(iCeMS 北川 進グループ 准教授)
 専門:錯体化学、多孔性材料、バイオマテリアル

亀井 謙一郎(iCeMS Chen, Yongグループ 助教)
 専門:ナノバイオテクノロジー、幹細胞工学

王 丹(iCeMS 准京都フェロー)
 専門:神経科学、RNA生物学、光化学

山本 真平(iCeMS 高野 幹夫グループ 助教)
 専門:固体化学

*所属・役職は、セミナー開催当時のもの。
司会・進行加納 圭、水町 衣里(iCeMS 科学コミュニケーショングループ)
開催場所京都大学iCeMS本館 2階セミナールーム (A207)
企画京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)科学コミュニケーショングループ(SCG)
主催京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)