形状と細孔サイズを自在に変える炭素材料の開発:多孔性「3次元」グラフェンナノシートの新規合成

2014年10月16日

 京都大学(総長:山極壽一)の物質-細胞統合システム拠点(iCeMS、拠点長:北川進)のフランクリン・キム(Franklin KIM)助教、ジャンリ・ゾウ(Jianli Zou) iCeMS研究員の研究グループは、形状と細孔サイズを自在に変えることができる多孔性の3次元グラフェンナノシートとその簡便な合成方法の開発に成功しました。

 多孔性グラフェンナノシートは電気特性、柔軟性や機械的強度という優れた物理的特性からさまざまな製品に使われることが期待されている材料です。これまでに2次元多孔性グラフェンシートのつくり方として、気相で成長させる方法(CVD)や酸化グラフェンを溶液に分散させてから塗布する方法などいくつかの方法が提案されてきました。しかし、何れの方法も用途に応じた形状にしたり、細孔のサイズを変えたりすることが容易ではなく、また2次元であるために表面積の大きいシートをつくることが困難でした。

 今回の研究では、「3次元」多孔性グラフェンシートの簡便なつくり方を開発しました。陰イオンをもつ酸化グラフェンと陽イオンをもつポリエチレンイミンというポリマーが電気的に引き合って、ポリイオンコンプレックスという複合体を形成する性質を利用しました。その複合体のなかで、陽イオンをもつポリエチレンイミンが陰イオンをもつ酸化グラフェンに拡散しながら、多孔性の酸化グラフェン積層膜をつくるという全く新しい方法を見出しました。この現象を利用してシート状や塊状などさまざまな形状の3次元多孔性グラフェンナノシートの合成に成功しました。

 本成果により、これまで不可能であった任意の形状をもつ積層膜や細孔サイズを自由に変えることができる3次元シートをつくることができるようになりました。さらに熱処理により高い電気伝導性が発現されました。

 多孔性グラフェンナノシートがもつ電気特性、柔軟性や機械的強度を活かし、リチウムイオン電池、燃料電池、キャパシター、吸着材、センサーなどへの応用により、社会に大きなインパクトを与えることが期待されます。

 本成果は2014年10月16日(木)に英国オンライン科学誌「Nature Communications(ネイチャーコミュニケーションズ)」で公開されました。



GOとb-PEIによって形成された多層構造体の細孔
 


文献情報

Extenal LinkDiffusion-driven layer-by-layer assembly of graphene oxide nanosheets into porous three-dimensional macrostructures

Jianli Zou1, Franklin Kim1

Nature Communications | Published Online 16 October 2014 | DOI: 10.1038/ncomms6254

  1. Institute for Integrated Cell-Material Sciences (iCeMS), Kyoto University, Kyoto 606-8501, Japan.

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