堀田秋津助教、iPS細胞を使った遺伝子修復に成功:デュシェンヌ型筋ジストロフィーの変異遺伝子を修復

2014年11月27日

 李 紅梅大学院生(CiRA初期化機構研究部門)、堀田秋津iCeMS助教(CiRA初期化機構研究部門)らの研究グループは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者さんから作製したiPS細胞において、TALENやCRISPRといった遺伝子改変技術を用いて、病気の原因遺伝子であるジストロフィンを修復することに成功しました。

 デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンという遺伝子に変異が生じ、筋肉の衰弱が進行していく疾患です。患者さんから得たiPS細胞でジストロフィン遺伝子を修復することが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの新たな遺伝子治療につながると期待できますが、30億塩基で構成される巨大なヒトゲノムの中で、ジストロフィン遺伝子というたった1カ所の変異だけを精密に修復するのは困難でした。

 堀田助教らの研究グループは、まずゲノム上の配列のなかから、予期しない場所でDNA切断が起きないように、ゲノム全体で1箇所しかない配列のデータベースを作成し、その情報を元に遺伝子の切断部位を決めました。ジストロフィンタンパク質の機能を取り戻すために、研究グループは3つの手法(Exon 45 skipping、Reading frame shift、Exon 44 knock-in)を患者さん由来のiPS細胞に用い、Exon 44 knock-in法が最も効果的なアプローチであることを見出しました。更に核型解析、コピー数多型解析、エクソーム解析により、最も遺伝子変異の少ないクローンを選びました。最後に選び出されたiPS細胞を骨格筋細胞へと分化させたところ、正常型のジストロフィンタンパク質を発現している事を確認しました。これらの結果は、将来のiPS細胞技術による遺伝子治療に向けて重要なフレームワークとなることが期待されます。

 この研究成果は2014年11月26日に「Stem Cell Reports」で公開されました。


文献情報

Extenal LinkPrecise Correction of the Dystrophin Gene in Duchenne Muscular Dystrophy Patient iPS Cells by TALEN and CRISPR-Cas9

Hongmei Lisa Li1, Naoko Fujimoto1,2, Noriko Sasakawa1, Saya Shirai1, Tokiko Ohkame1,5, Tetsushi Sakuma4, Michihiro Tanaka1 , Naoki Amano1, Akira Watanabe1, Hidetoshi Sakurai1,6, Takashi Yamamoto4, Shinya Yamanaka1,2,5, and Akitsu Hotta1,2,3

Stem Cell Reports | Published Online 27 November 2014 | http://dx.doi.org/10.1016/j.stemcr.2014.10.013

  1. 京都大学iPS細胞研究所(CiRA)
  2. 京都大学物質—細胞統合システム拠点(iCeMS)
  3. JST さきがけ
  4. 広島大学大学院 理学研究科
  5. グラッドストーン研究所