王丹助教、生きたマウス脳内の細胞内RNA活動の可視化に成功:早くて正確な製薬時のスクリーニングなど応用に期待

2015年6月29日

 国立大学法人Extenal Link京都大学(総長:山極壽一)の王丹特定拠点助教らの研究グループは、生きたマウスの脳において特定のRNAを蛍光標識し、その細胞内での局在や、薬剤応答動態を可視化することに成功しました。

 細胞内で、RNAはそれぞれ独自の局在を示しながら機能しています。この局在は環境変化や疾患によって変化しますが、局在変化によって、RNAは本来の機能を果たせなくなり、細胞の健康状態が損なわれてしまうと考えられています。しかしながら、RNAの集まりがどのように細胞の中で制御されているのか、どのようにして異常がもたらされるかは未だ解明されていません。

 研究グループは、生きたマウスの脳内へ、生体に害のない点灯型蛍光プローブを導入することで、生きた組織において細胞核内の特定のRNAの動きを可視化することに成功しました。このプローブは、目的RNAの濃度によって蛍光の強さが変わるため、生体内で標識したRNAの定量的な評価にも応用できます。また、このイメージング手法により、薬剤を投与したときの細胞内でのRNAの動きが生体組織内の細胞と培養された細胞とで異なることが初めて定性的に示されました。新しいイメージング手法は、遺伝子操作を必要としない生体内でのRNAの集まりの出現や消失といった「RNA本来の振る舞い」を研究する手法として期待されます。 さらにこれにより、製薬時のスクリーニングを早く、正確に行うことにも役に立ちます。

 本研究はExtenal Link日本学術振興会科学研究費補助金「挑戦的萌芽研究」および「若手研究(A)」Extenal Link日本分子生物学会若手研究助成富澤純一・桂子基金第二回研究助成Extenal Link革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)Extenal Linkセレンディピティの計画的創出」の支援を受けて行われました。本研究成果は2015年6月19日(金)に英国の科学雑誌「Nucleic Acids Research」において公開されました。


文献情報

Extenal LinkECHO-liveFISH: in vivo RNA Labeling Reveals Dynamic Regulation of Nuclear RNA Foci in Living Tissues

Ikumi Oomoto1,2, Asuka Suzuki-Hirano3,4 Hiroki Umeshima1, Yong-Woon Han1, Hiroyuki Yanagisawa5, Peter Carlton1, Yoshie Harada1,2, Mineko Kengaku1,2, Akimitsu Okamoto5,6, Tomomi Shimogori3, and Dan Ohtan Wang1

Nucleic Acids Research | Published Online 22 June 2015
DOI:10.1093/nar/gkv614

  1. 京都大学物質−細胞統合システム拠点(iCeMS)
  2. 京都大学大学院生命科学研究科
  3. 理化学研究所 脳科学総合研究センター
  4. 特別研究員 日本学術振興会
  5. 理化学研究所 基幹研究所
  6. 東京大学先端科学技術研究センター

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