第3回 iCeMSカフェを開催しました

第3回iCeMSカフェ

第3回iCeMSカフェ

猛暑のまっただ中の週末、京都の町家で第3回iCeMsカフェを開催しました。約30名の方に足を運んでいただきました。

今回のiCeMSカフェのゲストは、植田和光さんと研究室のみなさん。
植田さんは今、どうやって小さな細胞がいるものといらないものを分けているのかに興味を持っています。しかしながら、初めからこのことに興味を持っていた訳ではないようです。今回は、今現在に至ったきっかけについてのお話から始まりました。

ものを覚えることが苦手、色彩感覚や文章力もないという理由で林学と文化人類学を諦めたこと、『偶然と必然』(J. モノー著、みすず書房)という1冊の本との運命の出会いが分子生物学を始めたきっかけになったこと、抗ガン剤の細胞への作用を調べていてMDR1(多剤耐性タンパク質1)という細胞膜上に存在するタンパク質を発見したことが今の研究の原点であったことなど、様々な人間味あふれるお話を聞きました。

植田さんがそれ以後研究しているのは、細胞膜上に存在して様々な物質を「運ぶ」タンパク質、その名もトランスポーター(輸送体という意味ですが、カタカナの方がかっこいいのでそう呼んでいるそう)です。細胞膜にいるトランスポーターのおかげで、いるものを細胞内に取り込み、いらないものを細胞外に排出することができているのだそう。

細胞膜とは、細胞の外と内を隔てるうすーいうすーい膜。どれぐらい薄いかは、皆さんの目で確かめてください。ということで始まったのが、黒いお皿に水を張って、オリーブオイルを1滴たらすという実験(ご家庭でもできるので是非お試しあれ)。この時できた油の膜の厚みの約2倍が細胞膜の厚さ。こんなにうすい膜の中に植田さんが研究しているタンパクが存在するというのです。

「トランスポーターには様々な種類があり、それぞれに個性があります。それはわたしたちにも個性があるのと同じです。」という導入から始まり、その中でも特に、ということでコレステロールを「運ぶ」トランスポーターについてのお話がありました。いらなくなったコレステロールを体の外へ運ぶトランスポーター、善玉コレステロールをつくるトランスポーター、これらのトランスポーターがうまく働くことで、体の中のコレステロールのバランスはうまく調節されているのです。

以上の話を聞いた後、お茶とお菓子を楽しみながら各テーブルでトランスポーターにまつわるエトセトラの話で盛り上がりました。参加者からは「お話が分かりやすかった。和やかだった。楽しかった。」「調節を行うトランスポーターってすごいです!」という言葉をいただきました。植田さんの朗らかな人柄や、体の中で日々せっせと働いているトランスポーターの魅力の虜になったようです。

iCeMSカフェは定期的に開催しております。「次回の案内を送って」などなど、ご意見やご案内を希望される方はscience-cafe@icems.kyoto-u.ac.jpまでご連絡ください。お待ちしています!!

以下はアイセムスカフェ第3回開催時の情報です。

ゲスト 植田 和光さん(と 研究室のみなさん)
京都大学 iCeMS(物質−細胞統合システム拠点)教授
京都大学大学院 農学研究科 教授
題目 運ぶ -いるものといらないものを分ける-
日時 2008年8月2日(土曜日) 14時00分~15時30分(受付開始13時30分)
場所 ちおん舎(地下鉄「烏丸御池」下車6番出口より徒歩3分)
Extenal Linkhttp://www.chikichi.co.jp/
当日配布資料 PDF FilePDF (545 KB)
主催 京都大学 iCeMS(物質-細胞統合システム拠点)