「アート、サウンド、サイエンス:ちょっとブルブルしませんか」を開催しました

掲載:2011年6月30日

 
アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」

概要

 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)は、アートとサウンドとサイエンスのコラボレーションによる新しい企画「アート、サウンド、サイエンス:ちょっとブルブルしませんか?」を開催しました。2011年6月4日、11日に開催され、のべ47名の方にご参加いただきました。6 月 4 日は大人(20 歳以上)を対象に日本語で、6月11日は外国人とそのご家族を主な対象に英語で実施しました。

 この催しは3つのパートに分かれていました。

  1. 参加者のみなさんと一緒にアイディアを出し合いながら映像を鑑賞する時間。
  2. その映像と実生活とのつながりについてiCeMSの科学者から解説する時間。
  3. 世界的に知られるサウンドアーティスト・鈴木昭男さんと一緒に、映像に合わせて音をつくり出すという時間。

これら3つのパートを通じて、参加者のみなさんからは、楽しく、興味深い視点を教えていただきました。

 本企画は、独立行政法人科学技術振興機構の平成23年度科学コミュニケーション連携推進事業、機関活動支援の支援を受けて実施しました。

アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」
 
アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」
 
アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」
 
アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」
 
アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」

企画の目的

 「アート×サウンド×サイエンス」。一見異色なコラボレーションの目的は、アートやサウンドというキーワードに興味を持っていらっしゃる方々にも積極的に参加していただける企画にしたい、という思いがあったからです。私たちはこれまでに、多くのサイエンスカフェや科学実験教室を開催してきました。しかし、"科学"という看板を掲げていたことで、「ちょっと行きにくいなあ」「私が参加していいのかな」という思いを抱かれていた方も多いのではないでしょうか?今回の催しは、科学が好きな人にも、そうではない人にも足を運んでいただき、いろんな視点や考え方をみなさんと共有したいと思い、京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センターの方の協力を得ながら企画しました。

開催報告:パート1「映像を鑑賞する時間」

 会場には大きなスクリーンが設置されていました。そこに映し出されていたのは、形や大きさが様々な粒がブルブルと震えている映像。この不思議な映像を前にしてみなさんの頭の中にはたくさんのハテナが浮かんでいたことと思います。まずはそのハテナを共有するところから、始まりました。ナビゲーターの中山陽介さん(京都造形芸術大学)が、北野諒さん(京都造形芸術大学)とともに、この映像を見てどう見えるのか、どんな印象を受けるかなど、参加者のみなさんの声を拾いながら、映像を見て感じたことを共有していきました。

 さてここで、みなさんから頂いた声を少しご紹介です。

「バクテリア?」
「自分で動いているのではなく、動かされているよう。」
「星がまたたいているように見えます。」
    生き物?それとも違う?

こんな意見もありました。

「科学の話に偏っていませんか?もっと柔軟に考えたいんです。」
「何にも見えない。何かに見えなきゃいけないんですか?」

私たちが当初想定していたよりもいろんな見方があることに気づかされました。

 みなさんに見て頂いたこの映像は、光学顕微鏡の視野をライブで映し出したものでした。紙やすりを使って石を粉状にし、その粉を水に溶いたものをみんなで見ていたのです。石の粒なのに、なぜ動いていたのかって?その謎を解くキーワードは「ブラウン運動」です。

開催報告:パート2「映像と実生活とのつながりについての話の時間」

 この時間では、粒子がなぜブルブル動くのか、そのブルブルが実生活のどこに潜んでいるのかを、科学の側面から解説してもらいました。6月4日に登場したのは、生物物理学が専門の原田慶恵さん(京都大学iCeMS 教授)、そして、6月11日に登場したのは、統計物理学が専門のZiya Kalayさんと(京都大学iCeMS 京都フェロー)とPavel Hejcikさん(京都大学iCeMS 研究員)。

 どんなお話だったかというと、主には、

  1. 18世紀に植物学者のロバート・ブラウンが、花粉の中から出てくる微粒子を観察中にランダムな運動を偶然見つけたこと。
  2. 今ではこの運動は、ブラウンの名を取って「ブラウン運動」と呼ばれており、アインシュタインが理論化を行ったことでも有名であること。
  3. 「ブラウン運動」は、私たちの身の回りのいろんなことに関わっていること。空が青い理由、生物の呼吸、カフェインレスコーヒーの作り方、筋肉が動くメカニズム、はたまた株価の変動などに「ブラウン運動」が関わっていることです。

アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」
 
アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」

開催報告:パート3「映像に合わせて音をつくり出すという時間」

 休憩中、何やら不思議な音が聞こえてきました。日常で聞いたことのあるような、ないような音。どうやらスクリーンの裏から聞こえているようです。実は、この音を作り出していたのは、スクリーンの裏に隠れていた鈴木昭男さんです。鈴木さんは、生活の中にあふれる身近な音を自分の表現力にしてしまうサウンドアーティストです。ちなみに、この時スクリーンに映していたのは、絵の具の粒子のブラウン運動でした。赤、青、黄の3色の絵の具を水に溶くと、よどんだ色の水になりますが、それを顕微鏡でのぞくと、まるで宝石箱をひっくり返したような映像が見られるのです。この赤、青、黄の粒々がブルブルしている映像に合わせて、鈴木さんお手製の"楽器"に合わせて演奏して頂きました。

 でも、今回は、参加者のみなさんにも音作りを楽しんで頂く、というのが私たちのねらいです。鈴木さんのコレクション(空き缶、輪ゴム、金網、筒、石、ピンポン球・・・本当にいろいろな道具が並んでいました!)の中から、好きな道具を選んでもらいました。さて、スタッフも入り混じって、会場の全員でオリジナルサウンド作りです。ブルブルした動きを小刻みな音で表現する人が多い中、アルミ缶を床に転がしたり、選んだ道具に息を吹きかけてみたりする人もいました。映像の中の、ある粒になりきって音を出してみると、また違った味わい方ができました。「映像を見ようと心掛けるだけで、音の出し方から楽器の触り方まで違ってきて、聞こえてくる音も全く違っているように思える」と音と映像のつながりに感動を覚える声も聞かれました。

アート、サウンド、サイエンス「ちょっとブルブルしませんか」

まとめ

 開催後のアンケートには、「いろいろな発見のある楽しい会でした。」「見逃しがちなおもしろさに気付ける感覚にひたれました。」「芸術とコミュニケーションを結びつける活動が斬新だった。」という感想が見られました。その一方で、「目的が見えにくい。なんとなくわかる気もするけれど、何をやってるのか分からない。」「何をしようとしているのかチラシからは分からず、参加している中でもモヤモヤしていた。」という声もいただきました。主催者としては反省することもまだまだ多くある企画でしたが、みなさんからたくさんのヒントも頂きました。今後のプランに活かすべく、努力します。最後になりましたが、企画にご協力いただいた京都造形芸術大学のみなさま、オリンパス株式会社のみなさま、そして、この謎めいた企画にご参加くださったみなさまに深く御礼申し上げます。

イベント紹介ビデオ

スタッフリスト

企画主担当者:加納 圭(京大iCeMS)
企画副担当者:水町 衣里(京大iCeMS)
ナビゲーター:北野 諒(京都造形芸術大)、中山 陽介(京都造形芸術大)
ゲスト科学者:原田 慶恵(京大iCeMS)、Ziya Kalay(京大iCeMS)、Pavel Hejcik(京大iCeMS)
ゲストアーティスト:鈴木 昭男(サウンドアーティスト)
顕微鏡オペレーション:中山 和彦(オリンパス株式会社)、今村 尚平(オリンパス株式会社)
ビデオ撮影:高田 裕也(立命館大)、伊藤 良平(京都造形芸術大)
ビデオ編集:吉田 和誠(京都造形芸術大)
音声録音:高橋 三紀子(京大学術情報メディアセンター)
写真撮影:中原 星登(京都造形芸術大)、東 佑亮(京都造形芸術大)
書記:奈木 沙織(京都工芸繊維大学)、森 奈保子(京大農学部)
受付:馬場 美恵子(京大iCeMS)
搬入・搬出手伝い:黒飛 忠紀(京都造形芸術大)
スーパーバイザー:福 のり子(京都造形芸術大)、伊達 隆洋(京都造形芸術大)、山下 里加(京都造形芸術大)、北村 英之(京都造形芸術大)、渡川 智子(京都造形芸術大)


日時 第1回:2011年6月4日(土)13時30分~16時30分
第2回:2011年6月11日(土)13時30分~16時30分
会場 河原町VOXビル 3階 PARTY SPACE
(所在地:京都市中京区河原町三条下る一筋目東入る大黒町44)
企画 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)
科学コミュニケーショングループ(SCG)加納圭、水町衣里
主催 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)
協力 External link京都造形芸術大学アート・コミュニケーション研究センター
External linkart project room ARTZONE
オリンパス株式会社
 
※本イベントは、独立行政法人科学技術振興機構の平成23年度科学コミュニケーション連携推進事業、機関活動支援の支援を受けて実施しました。