第15回 iCeMSカフェを開催しました

掲載:2013年8月21日

第15回iCeMSカフェ

第15回iCeMSカフェ

第15回iCeMSカフェ

第15回iCeMSカフェ

第15回iCeMSカフェ

第15回iCeMSカフェ

 

 8月。外は燃えるような暑さです。iCeMS本館2階交流ラウンジでは、第15回iCeMSカフェが開催されました。尋常でない暑さにも関わらず、ご参加頂いたみなさま、ありがとうございました。

 今回のゲストは影山龍一郎さんと影山グループのみなさんです。わたしたちの脳や眼、耳などの感覚器にある神経細胞を、幹細胞からいかに効率よくつくり出すか。そのためには、細胞内の「リズム」について注目する必要があるとのことですが… そもそも、細胞内の「リズム」とはなんなのでしょうか。ES細胞やiPS細胞のような幹細胞のなかで、何が起こっているのでしょうか。

 外見上全く同じに見える幹細胞に、同じシグナルを与えたとしても、すべてが同じ種類の細胞に分化するわけではないのだそうです。実際はいくつかの種類の細胞に分化してしまいます。ただ、再生医療などの治療目的での使用を想定した場合、いろいろな細胞が混ざってできてしまうというのは大きな弱点です。目的の種類の細胞(今回は神経細胞)を効率よく生み出すにはどうしたらいいのでしょうか。それぞれの細胞の何が、この違いを生み出しているのでしょうか。

 カギを握るのは「Hes1」という遺伝子です。この遺伝子は数時間おきに、活性が高くなったり、低くなったりを繰り返していることが分かりました。これが細胞内の「リズム」の正体です。この遺伝子の活性が低い時期に分化を促したものが、特に神経細胞になりやすいことを実験で確かめることができました。

 胎児は神経細胞の前身である神経幹細胞がたくさん増え、どんどん神経細胞がつくられますが、大人になるにつれてこの神経幹細胞は増えなくなり、それに伴って神経細胞もあまり作られなくなります。大人の神経幹細胞では、どうも「リズム」が発生していない、言ってみれば「ノリの悪い」状態であるそうです。Hes1の作りだすリズムについて追及していけば、より効率的に神経細胞をつくり出すことが可能になるかもしれません。

 グループ内ではこれに関連して難聴の原因となる内耳の神経組織の再生を目指した研究にも取り組んでいるそうです。
 
 交流の時間では、様々な話題で会話が弾みました。神経や脳の分野だけに、「脳のしわの数は頭の良さと関係ある?」「病気になって神経細胞を治すと、その人の性格も元通りになるの?」など、興味深い疑問がいくつも飛び出します。

 話題は研究分野の専門的なことだけでなく、研究者としての生活や理念に関するところにも及びました。影山グループのメンバーは、「オリジナリティーがあること、自分がやっていて楽しいことがあるものが研究テーマとして理想的。」「初めにたてた仮説が、実験によって裏切られて、予想もしなかった結論が得られる。その過程が楽しい。」など、熱く語っていました。夏休みということもあり、中高生も多く参加していましたが、こうした研究者の姿勢に触れ、何か感じるものがあったかもしれません。

 各テーブルにはかわいらしい神経細胞のフィギュアが置かれ、更には細胞そっくり(!?) な和菓子も登場しました。涼しい室内で行われた交流は、終了時刻を過ぎ「蛍の光」が流れ始めても、ますます熱を帯びていくのでした。

 「次回の案内を送って」などなど、ご意見やご案内を希望される方は science-cafe@icems.kyoto-u.ac.jp までご連絡ください。お待ちしています!!

文 :倉田康平(京都大学農学部2回生)、iCeMS科学コミュニケーショングループ
写真:大森貴生


テーマ リズムにのる細胞
ゲスト 影山龍一郎(京都大学 iCeMS 副拠点長/ウィルス研究所 教授)、他 影山グループのみなさん
開催日時 2013年8月11日(日曜日)14時00分-15時30分
開催場所 iCeMS本館 2F交流ラウンジ
当日のお茶とお菓子 水まんじゅう(京栗菓匠 若菜屋)、サクッチ・ホロッチ(C3)、あられ十宜 つらね詩(京都・六角 無村庵)
主催 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)