第18回 iCeMSカフェを開催しました

掲載:2016年1月29日

第18回iCeMSカフェ

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第18回iCeMSカフェ

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第18回iCeMSカフェ

 

 1月9日、きりりと寒い冬の日、第18回iCeMSカフェ:“炭素と水の物語―CO2再資源化のすゝめ―”が開催されました。今回のゲストはiCeMS北川グループの田中晃二さんと若手研究者のみなさんです。参加者は教育関係者、主婦、学生、会社員、定年退職を迎えられた方などを含む17名の方々でした。

 はじめに行われたのは、北川グループ田中研究チームの小林克彰さんからの研究紹介。田中チームの研究テーマは二酸化炭素の再資源化です。私たちの周りにありふれている二酸化炭素と水から、燃料や原料を化学的な方法で産み出す方法を研究しています。空気中の二酸化炭素濃度は産業革命以降に急速に上昇し、このまま二酸化炭素が増え続けると植物の光合成効率が低下するとも言われています。また、エネルギー源というだけでなく、プラスチックなどの原料にもなっている石油ですが、埋蔵量には限りがあり枯渇が心配されています。田中チームは、二酸化炭素と水から光または電気のエネルギーを使ってメタノールを合成する方法を開発することで、こうした問題の解決に貢献しようとしています。その方法とは植物の光合成における「暗反応」(二酸化炭素から有機化合物を合成する反応)に似た反応を人工的に実現することです。こうした合成法が確立されれば、空気中の二酸化炭素を効率よく回収できるだけでなく、石油に依存せずに燃料や原料を生産できるようになるかもしれません。

 研究紹介の後は、5つのテーブルに分かれて自由な会話の時間です。温暖化や石油資源の枯渇などは私たちの誰もに関わってくる問題ですが、その対策に取り組む研究者と話す機会はなかなかありません。「似たテーマに取り組むライバルはいる?」「新しい化学反応を探すときは闇雲に試してみるの?」「水素燃料やバイオエタノールと比べてどんな利点・欠点がある?」など様々な質問が参加者のみなさんから飛び出します。

 「二酸化炭素の再資源化の方法は他にもあるの?」という質問には、「他にもいろいろなアプローチがありえるし、我々の方法が必ずしも正解とは限らない」という答えが。この分野の研究はまだまだ発展中で、個々のプロジェクトがいわば一つのチャレンジです。今まさに難問に挑んでいる研究者と実際に話すことで、「科学」や「研究」といったものに対するイメージも変わるかもしれません。

 話題は専門的な話だけでなく、科学一般が社会とどのように関わるべきかといった問題にも広がりました。「二酸化炭素の再資源化は社会への貢献が分かりやすいけれど、そうした貢献が見えにくい基礎的な研究も重要。基礎研究が応用的な研究を支えている。」という意見が研究者と参加者の双方から出ていたのが印象的でした。

 温かいほうじ茶と京都らしいお菓子を楽しみつつ、1時間半の時間はあっという間に過ぎてしまったのでした。

 「次回の案内を送って」などなど、ご意見やご案内を希望される方はscience-cafe@icems.kyoto-u.ac.jpまでご連絡ください。お待ちしています!!

 文:吉田善哉(京都大学大学院文学研究科修士2回生)、iCeMS科学コミュニケーショングループ
写真:大森貴生


テーマ 炭素と水の物語―CO2再資源化のすゝめ―
ゲスト 田中晃二(京都大学 iCeMS 特任教授)
小林克彰(京都大学 iCeMS 特定助教)
福嶋貴(京都大学 iCeMS 研究員)
藤井翔(北海道大学 助教)
藤井真知子(北海道大学 事務補佐員)
開催日時 2016年1月9日(土)14時00分-15時30分
開催場所 iCeMS本館 2F交流ラウンジ
当日のお茶とお菓子

くきほうじ茶(一保堂茶舗)、福豆(京御菓子司 俵屋吉富)、お年賀 八ッ橋(聖護院八ッ橋総本店)、ふくぼうろ(西村衛生ボーロ本舗)、椿(桂新堂)

主催 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)