Learning Lounge iCeMSラーニングラウンジ

なぜ私たちの科学が重要なのか?

「ラーニングラウンジ」ビデオシリーズでは、毎回2名の若手研究者が自身の研究についてトークを行います。社会背景に関連づけた魅力的なトークにより、なぜ自分の研究が世界にとって重要なのか、専門外の方にもわかりやすく訴えかけます。

第15回 2017年11月16日(木)

Nano-windmill for high-performance batteries

堀毛 悟史(ほりけ・さとし)さん

High-performance batteries will allow for major technological innovations. In order to achieve high-performance batteries, we are trying to control the nano-scale motion of charge in materials. In this talk, I will describe a nano-scale 'windmill' which can control the motion of charge with high precision.

Fighting cancer by unleashing immunity

Partha Chowdhury(パーサ・チョウドリー)さん

京都大学大学院 医学研究科 免疫ゲノム医学講座

Fight against cancer, the king of all maladies has been going on for several centuries and the conventional approaches often fail and lead to unforeseen side effects. One way to tackle this issue is to gain a deeper understanding of our immune system and unleash their power to kill the cancer cells with higher strike rate. Join us to know the progress of cancer vs immunity battle.

第14回(iCeMSキャラバンスペシャルコラボ企画)・2017年8月8日(火)

2017年3月4日 iCeMSキャラバン 福島県立会津学鳳高校:高校生たちがiCeMSにやってきたワケ。

高校生に道しるべを!科学者の世界を知りたい

会津学鳳高校の学生の皆さん

この世界には「科学者」という人たちがいるらしい。でもその人たちって、何をしているの?すごいことをしているの? 楽しいの? 魅力的な世界なら秘密にしてないで、教えて欲しい、きっと私たちの力になるから! 現役高校生の声を是非聞いてください。

講演者からのコメント

iCeMSラーニングラウンジでの発表を通して、英語やプレゼンテーションのノウハウと、物事を深く考え一貫性をもって主張することの困難さ、そして楽しさを学ぶことができました。また、自分への自信にもつながりました。このような機会を下さったiCeMSの方々と先生方に本当に感謝しています。

現役校長が語る次世代人材育成

加藤 知道(かとう・ともみち)さん

京都大学大学院 医学研究科 免疫ゲノム医学講座

今年の3月に会津学鳳高校で開催されたiCeMS Caravan「学びのカラクリ」は、生徒たちはもちろん、私たち教職員にとっても貴重な経験となりました。「今後の時代を担う人材育成とは何か?」このことを念頭に、校長は、生徒の潜在能力を引き出す術を考えなくてはいけません。このプレゼンを通して、私たちの未来へのアプローチを共有できれば、と思います。

講演者からのコメント

現役高校生と校長がプレゼンを行うという、ラーニングラウンジの特別企画に参加できて光栄でしたが、プレッシャーと緊張感もこれまで経験したことがないくらい、大きなものでした。プレゼン内容の吟味やスライド作りを通じて、現在の学校の課題と、校長として取り組むべき改善点が明確になりました。貴重な機会をありがとうございました。

第13回・2017年6月7日(水)

細胞から最期のサイン––私を食べて!

鈴木 淳(すずき・じゅん)さん

京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS 鈴木 淳グループ)

私たちの体の中では日々、たくさんの細胞が生まれたり死んだりしています。死んだ細胞は、「マクロファージ」という細胞が食べて片付けてくれます。彼らが死んだ細胞だけを見分けることができるのはなぜでしょうか?答えは細胞が死ぬときに発するサインにありました。実は、全ての細胞が生きている時からそのサインを出す準備をしています。ではどのようにサインを出すのか、そのメカニズムに迫ります。

科学者が楽しそうなワケ:異分野融合の先に見えたもの

古川 修平(ふるかわ・しゅうへい)さん

京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS 古川 修平グループ)

iCeMSでは、化学、細胞生物学、物理学など、いろんな専門の科学者が机を隣り合わせて研究をすることで、複数の分野にまたがった新しい研究が生まれています。でも、生まれてきたのは研究だけではありません。分野をこえて行うその議論そのものが重要で、それこそが楽しいポイントなのではないかと気付き、そのプロセスを体験してもらうための教育プログラムを作ってみました。どんなプログラムがどのようにして出来上がったのか、ご紹介します。

第12回・2017年4月26日(木)

細胞の中を泳ぐ生命の秘密を捕まえる

勝田 陽介(かつだ・ようすけ)さん

京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS 上杉志成グループ)

水の中を泳ぐ魚を捕まえたいとき、皆さんはどうしますか?きっと、狙った魚が好む餌をつけて、釣れるその瞬間を待つでしょう。では、細胞の中の物質を捕まえる場合はどうでしょうか?化学を使って細胞の中からRNAの特殊な構造を捕まえる方法を紹介したいと思います。

手描きの絵で科学をあなたのもとへ

福岡 沙希(ふくおか・さき)さん

京都外国語大学

複雑な科学を理解しようとするとき、リアルなコンピューターグラフィックは役に立ちます。しかし、それでも私のような科学にあまり縁のない人にとっては、近寄りがたさを感じることがあります。ではグラフィックを可愛らしい手描きの絵に変えてみたらどうでしょう?手描きの絵が生む「身近さ」が、人々の持つ「科学」の印象を変えられるのではないでしょうか。

講演者からのコメント

食わず嫌いな物って、匂いや見た目、一口目の味でその食材の可能性を全て絶ってしまいますよね。でも本当は大好物になる可能性だってあります。その食材が本当に好きかは、深く知ってみなければわかりません。学問も同じで、食わず嫌いのまま大人になる人がたくさんいます。学問は高度であればあるほど深く知るまで時間や努力が必要です。あなたの専門分野って面白いですよね?もっとたくさんの人に興味を持って欲しければ、最初の一口でどれだけ深くまで伝えられるかが大変重要です。そのツールとして、是非イラストを提案したい。それも、誰もが身近な手描きのものを。

第11回・2017年1月26日(木)

Shapes of Neurons Shape Our Behavior

川端 ケリー(かわばた・けりー)さん

iCeMS 見学美根子グループ

How does your brain recognize a fly, decide to catch it, and then move your hand? Even a simple activity such as this requires neurons to make many, many precise connections in the brain. Different neuronal shapes can control the way connections are made, and studying the rules of how these shapes are formed can help us better understand how the brain works.

研究者からのコメント

As of 2017 there are 7.5 billion people on this planet. In our brain, we have about 100 billion neurons, and like people, each of them are constantly sending messages, changing their status, and making, maintaining, or eliminating connections with one another. Understanding this network is an exciting yet massive undertaking, and is the next frontier in biology. In my current research, I focus on how the shapes of neurons are formed to make their proper connections. I’m always excited when learning about how a seemingly tiny change on the molecular scale can so vividly impact how our brain functions.

Foul Play! Making Self-Cleaning Surfaces

アンドリュー・ギボンズさん

iCeMS イーサン・シバニア グループ

What if we had self-cleaning surfaces? Currently, cleaning of filters used in industry costs a great deal of time and money. Fouling on medical devices can lead to rejection by the body. In my talk I explain how fouling occurs and how we can develop self-cleaning surfaces.

研究者からのコメント

While I’m at home, cleaning is a boring but important chore. In my lab however, the problem of how to keep surfaces clean becomes an exciting challenge requiring creative thinking. I began this research when I was developing filter membranes which are often damaged by the buildup of dirt. I am trying to create surfaces that can keep themselves clean while in use. This is a very useful feature for a wide range of devices. I hope that by the end of the talk you are convinced that cleaning isn’t as boring as you thought!

第10回・2016年11月24日(木)

Catch Me If You Can

Junjun Li(ジュンジュン・リ)さん

iCeMS Yong Chenグループ

Do you care about just "1 error" out of “100,000” normal outcomes? Can you ignore it? NO! You should care! That error will have a huge impact on your health. For safer cell therapy using iPS cells, we need to find every single error; all of the undesired iPS cells from implanted cells or tissues. I will introduce our micro-chip to catch such rare iPS cells.

研究者からのコメント

The abilities of iPS cells’ infinite proliferation and pluripotency have opened a gate towards regenerative medicine. However, undifferentiated iPS cells might turn into tumours if directly transplanted into a patient. In this talk I introduce a microfluidic chip to efficiently find and eliminate undifferentiated iPS cells from differentiated tissue cells. In near future, I wish this microfluidic chip would provide safer iPS cells for a patient.

スイッチを組み込んで細胞に問いかける

藤田 祥彦(ふじた・よしひこ)さん

iPS細胞研究所 齊藤 博英 研究室

iPS細胞はいろいろな細胞に分化することができす。しかし、移植の前には必ず目的にあった細胞だけ選別しなければなりません。今回、細胞に「遺伝子スイッチ」と呼ばれる分子でできたスイッチを組み込むことで、細胞の種類によって色が変わるように改変し、移植に必要な細胞だけを集めてくる取り組みについてご紹介します。

研究者からのコメント

今回紹介させていただいたRNAスイッチは、移植に使いたい細胞を選択的に取得するための合成生物学という分野からのアプローチです。将来的には、複雑な回路を組むことでコンピュータの論理演算のように複数の条件に一致した細胞を選択し、好きな遺伝子を発現させることができるようになると考えています。細胞の中に人工回路を構築して自在に操作することは、科学的な挑戦という側面と、iPS細胞から作成した細胞を安全に移植できるよう調整するための研究開発という側面を持った面白いテーマだと思います。

第9回・2016年9月29日(木)

Nano-Pockets to Trap Carbon Dioxide

Patrick Larpent(パトリック・ラルパント)さん

iCeMS 北川進グループ

The dramatic and continuous increase of carbon dioxide emission responsible of global warming is a major problem for the welfare and future of our planet. The development and easy fabrication of state-of-the-art technologies capable of capturing carbon dioxide efficiently from their emission centers are therefore of crucial needs. Join us to learn about the innovating use of ‘nano-pockets’ towards the realization of such novel molecule capturing systems.

Zoo from Lorises' Point of View

Wan-Ting Hong(ワンティン・ホン)さん

iCeMS 王丹グループ

The well-being of zoo animals is now drawing much more attention than before. But how do we know whether animals are satisfied about their environment or not? Let's look at slow lorises as an example of how well-being of zoo animals are measured quantitatively, in an effort to improve the lives of these small primates whose welfare is often overlooked.

Speaker's comment

Animals think, perceive their environment and experience suffering and pleasure as we do. However, while doctors can ask human patients how they feel, we have no idea whether animals are happy, sad or stressed because we do not share a common language with them. Scientists have been trying to establish rigorous scientific methods to measure well-being of animals as pets, in zoos, laboratories, on farms and in the wild.

第8回・2016年7月28日(木)

「やりとり」の中の小さな積み重ね:私たちを突き動かすものを探して

城 綾実(じょう・あやみ) さん

iCeMS 科学コミュニケーショングループ

挨拶、会議、遊び、団欒… 日々の生活の中で、私たちはいつも誰かとさまざまなやりとりをしています。こうした普段の何気ないコミュニケーションの中には、私たちの判断や行動を決める要因となるさまざまな仕組みが隠されているのです。私たちは日常のやりとりを観察し、浮かび上がってくるその「仕組み」について研究しています。その正体に迫る探検の一部を、あなたも覗いてみませんか。

研究者からのコメント

私たちの日常は、表現の選び方、些細な動作や声の出し方などを、私たちが想像している以上に巧妙に積み重ねて成り立っています。今回は、会話分析と呼ばれる研究プログラムに基づいた研究成果と今進行中の研究プロジェクトの一部をお話しさせていただきました。人間は、特別な訓練をしなくても、ミリ秒単位で自分の振る舞いを調整し、相手や状況に合わせた適切な行為をすることのできるすばらしい能力を持っていることを、多くの人に知っていただければさいわいです。

Seeing the Dynamics of Science Convergence

Alfonso Avila-Robinson(アルフォンソ・アビラ゠ロビンソン)さん

iCeMS Alfonso Avila-Robinsonグループ

Knowledge is rapidly growing and simultaneously fragmenting into numerous disciplines, making it difficult for scientists to see the “bigger pictures” of their science. Here I will show how the three-dimensional networking of meta-knowledge – knowledge about knowledge – can help us to see the continuous breaking down of barriers between disciplines in modern science.

研究者からのコメント

As the challenges facing researchers become more complex, the understanding of convergence―the merging of multiple and disparate disciplines― in science is more relevant. In this talk, I show that three-dimensional visualizations of knowledge structures can help us understand the complex interconnections of science. Future studies will explore the impact of convergence at a global level, as well as the types of research institutions that support convergent research.

第7回・2016年4月27日(水)

マラリアの無い世界を造る

長谷川 光一(はせがわ・こういち) さん

iCeMS インドサテライトグループ

マラリアって何?知らない人も多いかもしれません。マラリアは世界中で猛威を振るっており、世界的な健康問題の一つです。マラリアは対岸の火事と考えている人も大かも知れませんが、世界中の人々が行き交う今日、マラリアは日本や先進国でも問題になる可能性が高いのです。マラリアが何なのか、マラリアのない世界を作るために私たちが行っている研究を通して紹介します。

研究者からのコメント

今回は、iCeMSと、インド国立生命科学研究センター(NCBS)、インド幹細胞・再生医学研究所(inStem)が国際連携の一環として取り組んでいる、iPS細胞を用いたマラリアの研究を紹介します。マラリアはいまだに世界中で猛威をふるっており、人々の行き来が盛んな今日では、日本も脅威にさらされています。また今回はカナダの学生が多数参加してくれていますが、日本だけでなくカナダにおいても同様です。世界規模の研究が重要だということを知っていただければ嬉しく思います。

Nanotechnology by Herding Molecules – Hints from Theory

Daniel Packwood(ダニエル・パックウッド) さん

iCeMS Daniel Packwoodグループ

Society is demanding smaller and smaller electrical devices. Nanotechnology is an entirely new approach to device manufacturing, in which extremely small objects are created by assembling molecules into patterns and shapes. But can nanotechnology truly be realized? This talk will explain the key role that theoretical science is playing in the development of nanotechnology.

研究者からのコメント

Viewers beware! You’re in for a scare! Here, we touch on the spooky topic of molecular self-assembly, in which molecules inexplicably gather together to form tiny devices and machines. Might this be the work of a poltergeist? Here, I burst your bubble and explain how molecular self-assembly can be simulated on a computer via judicious mathematics and theoretical chemistry. References to Canada and farm animals are included.

第6回・2016年3月31日(木)

しっかりギュッとくっついて!――細胞をつなぐ力に迫る

山本 暁久(やまもと・あきひさ) さん

iCeMS 田中 求グループ

細胞は生き物を形作るブロックのようなもので、互いにくっつくために"糊"を持っています。この糊がなくなっていくと組織が崩れ、癌の転移のような重い病気につながることがあります。接着の強さが分かれば、細胞が健康かどうかを認識することができるかもしれません。そこで、接着力を直接測定し、細胞を特徴づけるための新たな手法をご紹介します。

研究者からのコメント

今回お話させていただいたテーマである細胞接着は、生き物の体が細胞を使ってどのように組織や臓器を“組み上げている”かを理解するための重要な要素です。細胞の種類や状態によって接着力がどう変わるかを定量的に測定することで、病気などで組織が乱れるメカニズムを理解し、病気をいち早く見つけるための新たな手法を開発する手がかりを得たいと考えています。物理・生物・医学にまたがるユニークな研究を目指しています。

あなたの「マニュアル」を守る

Georgia Kafer(ジョージア・ケーファー) さん

iCeMS Peter Carlton グループ

人間を操作する「マニュアル」は、体の中の特別な説明書に書き込まれています。その説明書は「DNA」と呼ばれ、もしDNAが傷つくと、マニュアルの一部がなくなったり、うまく伝わらなくなったりして、病気になりやすくなってしまいます。DNAは、体の外から傷つけられることもありますが、多くの場合は、体の中で日々おこっているさまざまな生命活動の中で傷ついていきます。では、傷ついたDNAはどのように修復されるのでしょうか――その解明方法に迫ります。

研究者からのコメント

私は今、DNAの損傷に関する研究に取り組んでいます。細胞が、きわめて整然としていながら驚くほど複雑にDNAの損傷に反応する様子は芸術的で、今まで関わってきたどの研究よりも一番楽しいと感じています。この分野の研究は、1940年代に始まったにもかかわらず、まだ比較的解明されていないことが多いという点も、研究者にとっては魅力です。でも私が何より魅力を感じるのは、DNA損傷に関する新しい発見は、人類が抱える様々な病気に対する理解、治療法、予防法について直接的な影響を与える可能性を秘めている、ということです。

第5回・2016年2月25日(木)

体の中で働く小さな医者:光で操るナノロボット

中辻 博貴(なかつじ・ひろたか) さん

iCeMS 村上 達也グループ

医療の発展とともに薬も大きく進化してきました。薬草から始まり、化学で合成された薬、そして最近では遺伝子を使った新しい薬も開発されています。でもまだまだ進化していないこともあります。例えば、薬を飲んだ後は私たちにできることはなく、薬に任せて休むだけです。でも、もし飲んだ後に遠隔で操作できる薬が作れればもっと効果的に働いて、今までの薬に出来なかったことができるかもしれません。今回は、光を使った新しい薬を目指す研究について紹介します。

研究者からのコメント

私たちのグループでは、太陽電池などに使われるような、光に反応して機能するナノ材料を生物に応用する研究を行っています。私たちの神経細胞には「TRPV1」という、熱・酸・唐辛子に含まれるカプサイシンなどの刺激に反応して痛みや熱さを感知する、「痛み受信機」があります。今回紹介するのは、光を吸収して熱を発する材料を利用し、熱に反応するTRPV1を光で制御する研究です。今回のトークはまだ、人工的に培養した細胞での実験結果に基づくものですが、将来的には、生体において痛みのコントロールなどへの応用が可能になるかもしれません。

百聞は一見に如かずー脳の中のできごと

大本 育実(おおもと・いくみ) さん

王丹グループ

何かをひらめいたとき、学んだとき、脳の中ではいったいどのようなことが起きているのでしょうか?わからないときは見て確かめるのが一番。本来見えない細胞内の変化を可視化する技術を開発して、学習時に起きている脳の中のできごとに迫ります。

研究者からのコメント

王丹グループでは、個体の脳内でRNAの活動を可視化して生きたまま観察するシステムを開発し、それを用いて学習や記憶のメカニズムを理解しようとしています。今回私が紹介するイメージング(可視化)技術は、目立たせたいシグナルを明るくするのではなく、周りのノイズを減らすことで目的のシグナルをより見やすくするという、逆転の発想から生まれたものです。まだまだクリアするべき課題は多いですが、今日は何が見えるだろう、とワクワクしながら記憶の謎解きに取り組んでいます。

第4回・2015年11月19日(木)

ヒトのライフサイクルの謎を解読する

小島 洋児(こじま・ようじ)さん

iCeMS 斎藤 通紀グループ

人の一生は両親の精子と卵子からできた一個の細胞、受精卵から始まります。この一個から体の全組織が形成されますが、一部は生殖細胞となり、それにより私たちの子供が生まれます。このヒトのライフサイクルはどのようにして維持されるのでしょう。生殖細胞の発生や分化の神秘を、iPS細胞を用いて解読する試みについてお話しします。

研究者からのコメント

斎藤グループではマウスのES細胞から始原生殖細胞を作成する技術を開発してきました。この技術をヒトiPS細胞に応用すれば、これまで固く閉ざされていたブラックボックス「ヒトの生殖細胞の異常による先天性疾患の発生機序」の中をのぞくことができるかもしれません。私は一つでも先天性疾患の分子機序を解明したいと思っています。もしかしたら、予防や治療につながる知見が得られるかもしれません。

第3回・2015年10月21日(水)

DNAはどうやってこどもたちに受けつがれるの?

佐藤 綾(さとう・あや)さん

iCeMS Peter Carltonグループ

体内で精子や卵子が作られるとき、わたしたちのDNAの半分だけが精細胞や卵細胞に組み込まれます。DNA分子はどうやって、こんなにも精密にコントロールされるのでしょう。細胞分裂の中で、DNAがどのように操作されることで、あなたの遺伝情報がこどもたちに渡されていくのかについてお話します。

「見えない世界」を「見える世界」に

廣理 英基(ひろり・ひでき)さん

iCeMS 田中耕一郎グループ

人間の目は明るい太陽の下ではよく見え、色鮮やかな山並みから細かいホコリまでとらえることができますが、夜の暗闇の中で視覚はほとんど役に立ちません。ところが、動物の中にはヘビなどのように、獲物が発する赤外線を感知して暗闇の中で狩りをするものがいます。人類もまた、太陽が見せてくれる世界の外側を見るための研究を重ねてきました。レーザー光装置の発展がもたらす新たな「見える世界」に迫ります。

第2回・2015年8月3日(月)

実現間近?-自然にならえば不治の病の治療法が見えてくる

Dr Ganesh Pandian Namasivayam(ジーピー・ナマシヴァヤム)さん

iCeMS 杉山弘 グループ助教

ニュースでは日々、科学界での新しい発見が伝えられ、治療不可能だと思われていた病気の治療に一歩近づいたと報じられます。「近づいた」とは言いますが、一体どれくらい近づいたのでしょうか?複雑な病気の安定的な治療法により早くたどりつくために必要な、自然の摂理にならった治療法の開発についてお話しします。

心臓発作ってなんだろう?

Dr Marcel Hörning(マルセル・ホールニング) さん

iCeMS 田中求グループ助教

知っていますか?心臓病は世界で最も高い死因の一つですが、ほとんどの人が心臓病とは何か、どのように治療されるのかを知りません。心臓発作の時、私たちの心臓に何が起こるのか、AED や埋込型ペースメーカーはどうやって我々の命を救うのかについてお話しします。

第1回・2015年6月29日(月)

チップの上に生きる

亀井謙一郎(かめい・けんいちろう)さん

iCeMS Yong Chen グループ准教授

病気の原因を明らかにしたり薬のはたらきを確かめるために行われる動物実験は、時間もコストもかかり、失敗も多い。だけど、新しい手法も開発されているのです。小さな装置(チップ)の上で生命体の起こす現象を再現することで、動物実験のもつ様々な問題の克服を目指す──それが僕のご紹介する「Body on a Chip」です。

きのう何食べた?──憎まれ役のコレステロール

永田紅(ながた・こう) さん

iCeMS 植田和光グループ助教

皆さんは昨日何を食べましたか?ステーキ、ハンバーガー、唐揚げ、アイス... テレビもお母さんも口をそろえて「コレステロールの高いものばかり食べていてはダメ!」と言うけれど...。実は、コレステロールは私たちの体にとって欠かせない成分で、その濃度は非常に巧妙に調節されているのです。心臓病を予防し健康な暮らしを守ってくれる「善玉コレステロール」(HDL)の重要性に迫ります。