The Director’s Vision 拠点長ビジョン

拠点長 上杉 志成

研究

アイセムスは、細胞生物学と化学の有機的な融合によって、生命と物質の境界にある細胞内自己集合体の理解(学理)とそれらに触発された機能性自己集合材料によるイノベーション(応用)の両方に挑戦します。

生命は化学物質でできています。しかし、化学物質は生命ではありません。iCeMSでは、「化学物質の自己集合」が化学物質と生命の境界をなすと考えています。細胞内には、膜構造体、非膜オルガネラ、細胞骨格、クロマチンなど、多くの自己集合体が存在し、複雑な機能を達成しています。iCeMSでは、細胞内の自己集合体を理解し、その英知を革新的自己集合材料の創成に生かすことでグローバルな問題を解決します。この目的を達成するために、細胞生物学、材料科学、ケミカルバイオロジー、合成化学、計算科学など、自己集合に関する多岐にわたる研究者を結集させ、ダイバーシティーとフォーカスの両方を実現したいと考えています。

具体的な研究プロジェクト

(1) 生命と物質の境界にある細胞内自己集合体の理解

生命は自己集合の究極の例です。区画化、情報伝達、遺伝子発現、エネルギー代謝を制御する細胞内自己集合体の分子レベルの理解、並びに理解を可能にする化学ツールの開発を先導します。

(2) 細胞内自己集合体に触発された機能性自己集合材料

化学者は細胞内自己集合体からインスピレーションを得ることができます。そのインスピレーションから非天然の機能性材料を創成し、グローバルな問題の解決に挑戦します。自己集合性医薬品、物質を純化する自己集合材料、エネルギーを蓄積する自己集合材料、二酸化炭素を化学変換する自己集合材料などが挙げられます。

システム改革とグローバル化

大学のシステム改革や次世代研究所のテストベッドとして、アイセムスは以下の6つのビジョンを達成するために、さまざまな実証実験を行っています。

国内外からの戦略的リクルートメント

国内外から大学院生や研究員をリクルートする新しい方法を試みます。さらに、学内機関と連携し、学部生の初期の段階から研究を経験する機会を与えます。

オンサイトラボによるグローバル展開

アイセムスが持つ6つのオンサイトラボを京都大学グローバル化のテストベッドとし、共同研究や機器共有の他、学生リクルートメントの拠点、大学院入学試験、寄附金獲得などを試験的に行います。

アナリシスセンターをコアファシリティーのモデルに

アイセムスのアナリシスセンターは先端研究機器の効率的な共有をすすめています。大学のコアファシリティーのモデルとなるべく、先進的な運営を行います。

スタートアップ設立によるイノベーション

アイセムスからは多くのスタートアップ企業が生まれています。画期的な研究成果を社会に早期還元し続けるため、スタートアップを設立する効果的な手法を模索します。

ステークホルダーとのコミュニケーション最適化

国、大学、企業、国民、投資家など基礎研究には多様なステークホルダーからの理解とサポートが必要です。研究の価値を理解・享受していただくために、アイセムスは様々な実証実験を行っています。

インターナル・コミュニケーションの最適化

インターナル・コミュニケーションを最適化することにより、効率性、コンプライアンス、満足度の向上と、また、異分野共同研究の促進を目指します。さらに、アイセムスでは女性や外国人スタッフが活躍していますが、無意識の偏見の是正など高質なDiversity & inclusion (D&I) を実現するための先進的な取り組みを行っています。