活動報告

2016年12月2日

第20回 iCeMSカフェを開催しました

 10月22日、京都三大祭りの一つである時代祭が執り行われたこの日に、iCeMS本館ではiCeMSカフェが開催されました。第20回目となる今回のテーマは「無限の可能性を保つ-暴れん坊細胞を躾ける!-」。ゲストはiCeMS長谷川光一特定拠点講師と若手研究者のみなさんです。参加者は、主婦、学生、会社員、司書、公務員の方などを含む15名の方々でした。

 最初に行われたのは、長谷川さんによる、紙芝居を用いたラボの研究紹介。幹細胞に関する最先端の研究について、時代劇の設定を織り交ぜながら、ユーモアたっぷりのお話が繰り広げられました。幹細胞は、生体のさまざまな組織の細胞に変化(分化)する能力と、分化する前の状態で無限に増殖する能力をもっています。近年、細胞移植治療などで注目を浴びているES細胞やiPS細胞も幹細胞の一種です。社会からの大きな期待が寄せられていることもあり、“優等生”のように見えるかもしれませんが、実はとっても“暴れん坊”。毎日お世話をしないと勝手に分化を始めてしまいます。また、“寂しがりや”な一面ももっていて、周りの幹細胞の数が少なすぎると死んでしまいます。

 長谷川ラボは、この暴れん坊だけれども繊細な幹細胞を育てるのに適した環境を整えるための研究を行っており、幹細胞が育つ培地に加える培養液や添加物を工夫するなど、様々なアイデアのもとで日々実験に励んでいます。上手な“躾け方”が明らかになれば、幹細胞を用いた治療や新薬開発が大きく進展していくかもしれません。

 研究紹介の後は、トークタイム。4つのテーブルに分かれて、研究者と参加者のみなさんとで語り合う時間です。「研究に使う幹細胞はどこから手に入れているの?」「iPS細胞って簡単につくれるものなの?」「どうしてこの研究を始めようと思ったの?」等々。参加者のみなさんから質問が飛び出すと、長谷川さんや若手研究者のみなさんは丁寧に回答していました。「幹細胞が育つ培地ってどういうものなの?」という質問に対しては、培養液とシャーレを取り出して詳しい解説がなされました。その後、科学一般が社会に与える影響についてまで話は広がり、研究者と参加者という関係性にとらわれない自由な会話が展開されていきました。

 温かいほうじ茶と京都のお菓子をお供に、終始和気あいあいとした雰囲気で過ぎていった1時間半。幹細胞の切り開く新たな時代を垣間見ることができました。

 文:小林沙織(京都大学大学院理学研究科 修士1回生)、iCeMS科学コミュニケーショングループ

テーマ
無限の可能性を保つー暴れん坊細胞を躾(しつ)ける!ー
ゲスト
長谷川 光一(京都大学iCeMS特定拠点講師)
池田 達彦(京都大学iCeMS研究員)
日野 元基(京都大学iCeMS研究員)
吉田 則子(京都大学iCeMS研究支援員)
開催日時
2016年10月22日(土)14:00〜15:30
開催場所
iCeMS 本館 2F交流ラウンジ
当日のお茶とお菓子
くきほうじ茶(一保堂茶舗)、應天(大極殿 本舗)、ぎおんの里、つじりの里(祇園 辻利)、つらね詩(蕪村庵)、りーふ ちょこれいと(モンロワール)
主催
京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)