松田亮太郎准教授、北川進教授ら、光によって有毒ガスなどの気体を自在に捕捉・分解する材料を開発 [Nature Materials]

2010年7月26日
JST課題解決型基礎研究の一環として、京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)の北川進副拠点長/教授、JST戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究「北川統合細孔プロジェクト」の松田亮太郎グループリーダー、同プロジェクトの佐藤弘志研究員らは、光照射によって有毒ガスなどの気体分子を捕捉・分解できる多孔性物質を開発しました。
この多孔性物質は、亜鉛イオンと有機配位子(アジドイソフタル酸(AIP)およびビピリジン)で構成され、紫外光を照射することによって、内部のナノ細孔中に極めて反応活性の高い化学種(ナイトレン)を非常に多く作り出すことができます。ガス中で紫外光照射実験を行った結果、細孔表面のナイトレンが酸素(O2)や一酸化炭素(CO)を効率的に捕捉・分解できることが分かりました。また、大型放射光施設SPring-8の高輝度放射光を用いて紫外光照射による細孔表面の構造変化を詳細に分析することによって、高活性で不安定なため観察が難しいとされるナイトレンが細孔表面に整然と並んでいる様子を直接観測することにも成功しました。従来の多孔性物質では、温度や圧力を変えることで吸着現象を制御していましたが、本研究で開発した多孔性物質は、紫外光によって吸着現象を制御できます。
この画期的な成果を応用することによって、今後、大気中のさまざまなガス(O2、CO、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)など)を効率的に分離・除去することが可能になり、人類の健康と地球環境の改善に貢献する材料開発につながるものと期待されます。本研究は、京都大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、理化学研究所と共同で行われ、本研究成果は、2010年7月23日(英国時間)に英国科学雑誌「Nature Materials」のオンライン速報版で公開されました。
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文献情報

Hiroshi Sato, Ryotaro Matsuda, Kunihisa Sugimoto, Masaki Takata and Susumu Kitagawa
Nature Materials 9, 661-666 (2010) | DOI: 10.1038/nmat2808
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