John Heuser教授と山中伸弥教授、米国科学アカデミー会員に選出

2011年5月6日

 米国科学アカデミー(NAS)は3日、ジョン・ホイザー(John Heuser)京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)教授・米国ワシントン大学(セントルイス)教授ら72名を会員として、山中伸弥京都大学iPS細胞研究所(CiRA=サイラ)所長・iCeMS教授・米国グラッドストーン研究所上席研究員ら18名を外国人会員として選出しました。

 これまでにアルバート・アインシュタインを含む約200名のノーベル賞受賞者やトーマス・エジソン等が選ばれており、同会員への選出はアメリカの科学者や技術者にとって最も名誉な事の一つであるとされています。

 NASは1863年に設立された非営利の学術団体で、科学・技術の発展と社会福祉への貢献を目指しています。現在、2,113名の会員と418名の外国人会員で構成されています。総合科学誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』を発行している事でも知られ、米紙ニューヨークタイムズでは「アメリカで最も権威があるとされる学術機関」として紹介されています。

ジョン・ホイザー教授

 生物試料を画像として捉えることを使命とするホイザー教授は、「急速凍結/ディープエッチ」と呼ばれる電子顕微鏡法を開発した事で特に知られています。

 細胞全体という「マクロ構造体」から、個々の高分子やその集合体という「メゾスケールの分子機械」まで、あらゆるものを「見る」ことに取り組んでいます。特に注力しているのは、「生きているのに近い」状態の試料を調整することです。このため、上述した急速凍結/ディープエッチ電子顕微鏡法を開発し、それに必要な装置と手法を世界中に普及させてきました。この方法を用いて、神経伝達や筋収縮、ウィルスの細胞感染、DNA導入時における細胞膜損傷と修復など、体の中で高速に起こる細胞現象の決定的瞬間を画像としてとらえ、実際に何が起こっているかを明らかにすることに成功しています。

山中伸弥教授

 山中教授の研究グループは2006年、マウスの体細胞に4つの遺伝子を導入し、人工多能性幹(iPS)細胞の作製に成功したことを世界で初めて発表しました。同グループは2007年、ヒトiPS細胞の作製にも成功したことを報告しています。iPS細胞の発見は幹細胞生物学を飛躍的に発展させたとされ、また創薬や再生医学において新たな道を拓く技術として期待されています。

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