RNAiの仕組みに1分子観察で迫る

2015年7月2日
小さなRNAが特定のタンパク質の合成を抑えるRNAiは、遺伝子のはたらきを調べる方法として、生物学実験に幅広く利用されています。RNAiは、小さなRNAとアルゴノートと呼ばれるタンパク質からなる複合体RISCが、標的RNAに結合し切断することで引き起こされます。しかし、RISCがどのように切断しているかについては、これまで詳しく調べる方法がなく謎に包まれていました。
国立大学法人京都大学(総長:山極壽一)の多田隈 尚史 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)特定研究員は、東京大学の泊幸秀教授、上田卓也教授、姚春艶研究員(現・中国第三軍医大学准教授)、佐々木浩助教らと、1分子イメージング技術を用いて、RISCが標的RNAを切断する過程を分子1個のレベルで観察することに、初めて成功しました。これは、RISCが標的を切断する仕組みを解き明かす画期的な研究成果であるとともに、現在進められているRNAiを利用した次世代医薬品の開発など、RNAiのさらなる応用を加速することが期待されます。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金「新学術領域「非コードRNA作用マシナリー」、新学術領域「
ノンコーディングRNAネオタクソノミ」、若手研究(A)、挑戦的萌芽研究の他、
笹川財団・日中笹川医学奨学金制度、
国家自然科学基金(中華人民共和国)、
武田科学振興財団の支援を受けておこなわれました。本研究成果は、7月2日(木)の週に科学誌「
Molecular Cell」誌に掲載され、表紙を飾りました。
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文献情報
Single-molecule analysis of the target cleavage reaction by Drosophila RNAi enzyme complex
(参考訳:ショウジョウバエRNA干渉機構の1分子観察)
Chunyan Yao1,2, Hiroshi M Sasaki3, Takuya Ueda1, Yukihide Tomari1,3* and Hisashi Tadakuma1,4*
*Corresponding author
Molecular Cell | Published Online 2 July 2015
DOI:10.1016/j.molcel.2015.05.015
- Graduate School of Frontier Science, The University of Tokyo, Chiba 277-8562, Japan
- Department of Laboratory Medicine, Southwest Hospital, Third Military Medical University, Chongqing 400038, China
- Institute of Molecular and Cellular Biosciences, The University of Tokyo, Tokyo 113-0032, Japan
- Institute for Integrated Cell-Material Sciences, Kyoto University, Kyoto 606-8501, Japan