活動報告

2016年8月23日

第19回iCeMSカフェを開催しました

 6月25日、まだまだ梅雨のじめじめとした日々が続く中、iCeMS本館では第19回iCeMSカフェ:“体の中の合図-元気の秘密を観察し、操る-”が開催されました。今回のゲストはiCeMS坂口怜子 特定助教と若手研究者のみなさんです。参加者は、企業にお勤めの方、教員、大学院生、定年退職された方と立場も様々な11名の方々でした。

 会場に到着された参加者のみなさんは、まずは3〜4人ごとに4つのテーブルに分かれて自己紹介。冷たい麦茶でホッと一息ついたところで、坂口さんから「体の合図」をテーマに研究チームの紹介をしていただきました。そもそも「合図」ってなに? そんな参加者のみなさんの疑問に答えるかのように、「合図」を「信号機」に例えてお話が始まりました。

 人の体に起こるすべての反応は、有機小分子やイオン、温度などの「合図」によって制御されています。体の中の「合図」が、どのタイミングで、どれくらいの量出ているかを理解できると、病気の治療をはじめ様々なことへの応用が期待できるそうです。ですが、「合図」となる分子は数ナノメートルというとても小さなもの。目に見えるものではありません。そこで、坂口さんたちは、指示薬と呼ばれるセンサーを新たに設計し、これにより、細胞の温度という「合図」を可視化して観察することに成功しました。

 体の中の「合図」を見えるよう工夫したら次は具体的にどうすれば応用への道が開けるのかが気になるところです。なんと坂口さんたちは、「合図」を閉じ込め、光などを使い必要な場所とタイミングで取り出すことのできる小さな材料、ナノ材料の開発も行っています。まだまだ基礎研究の段階ですが、いつの日か、薬として「合図」を閉じ込めたナノ材料を体内に取り込むことが可能になったら…。炎症が起こっているところに薬を届け、光によって「合図」を放出させることにより、その炎症が治るというしくみができるかもしれません。

 坂口さんによる研究紹介の後は、再び4つのテーブルに分かれて研究者と参加者のみなさんとで語り合う時間です。どのような話題が出たのか少し覗いてみると「ナノ材料って体に残らないの?」「誰の細胞を使って観察しているの?」など様々。ナノ材料の医療への応用に期待する反面、副作用に対して不安感を募らせる参加者のみなさんの「本当に安全なの?」という質問に対して、坂口さんや若手研究者のみなさんは丁寧に答えていました。その後、お話は、研究者の日常生活といったことにも広がりました。

 京都のおいしいお菓子に舌鼓を打ちながら、科学についておしゃべりしていると、当初の緊張感もどこ吹く風。お菓子の糖分が、緊張を和らげる「合図」を出してくれたのかもしれません。和やかな雰囲気のまま一時間半が過ぎていきました。

「次回の案内を送って」などなど、ご意見やご案内を希望される方はscience-cafe@icems.kyoto-u.ac.jpまでご連絡ください。お待ちしています!!

文:川崎文資(滋賀大学大学院教育学研究科修士1回生)、iCeMS科学コミュニケーショングループ

テーマ
体の中の合図ー元気の秘密を観察し、操るー
ゲスト
坂口 怜子(京都大学 iCeMS 特定助教)
山口 一真(京都大学大学院工学研究科 博士課程)
内山 誠(京都大学大学院工学研究科 博士課程)
池村 周也(京都大学iCeMS/大学院工学研究科 修士課程)
開催日時
2016年6月25日(土)14時00分-15時30分
開催場所
iCeMS 本館 2F交流ラウンジ
当日のお茶とお菓子
水出し 麦茶(一保堂茶舗)、涼清水(祇園 菓匠 清閑院)、花満月(京都 六角 蕪村庵)、たがね餅(みやび堂)、ぎおんの里(祇園 辻利)
主催
京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)