抗腫瘍免疫を増強する植物由来の天然物質
本庶佑特別教授らが開発した免疫チェックポイント抗体療法(※1)は、がん治療に革新をもたらしました。しかし、その効果はがんを殺傷するT細胞ががん部位で機能不全に陥ることで制限されています。京都大学の上杉志成(うえすぎ・もとなり)教授、茶本健司(ちゃもと・けんじ)教授、本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授らの研究グループは、がんによって機能が低下したT細胞を活性化する物質を探索しました。その結果、植物由来の天然物であるアルヴェニンI(クルクビタシンB 2-O-β-D-グルコシド)が、がん存在下でT細胞を活性化する物質として特定されました。詳細な解析の結果、アルヴェニンIはMKK3というリン酸化酵素に共有結合して活性化させることで、疲弊したT細胞のミトコンドリア機能を回復させることが示されました。マウス実験では、アルヴェニンIの投与が、単独使用または免疫チェックポイント阻害剤との併用でがん免疫療法の効果を高めることが確認されました。アルヴェニンIやその類似物質はがん免疫を高める薬物として期待されます。
本研究成果は、2025年1月10日にJournal of the American Chemical Society(アメリカ化学会誌)でオンライン公開されました。
詳しい研究成果について
書誌情報
論文タイトル:“Covalent Plant Natural Product that Potentiates Antitumor Immunity”
著者:Misao Takemoto, Sara Delghandi, Masahiro Abo, Keiko Yurimoto, Minami Odagi, Vaibhav Pal Singh, Jun Wang, Reiko Nakagawa, Shin-ichi Sato, Yasushi Takemoto, Asmaa M. A. S. Farrag, Yoshimasa Kawaguchi, Kazuo Nagasawa, Tasuku Honjo, Kenji Chamoto,* and Motonari Uesugi*