WPI-iCeMS、AAAS年次大会で2度目の海外アウトリーチ:ブースとワークショップで「開かれた研究拠点」を世界に発信

2013年2月26日

 京都大学iCeMSなど文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の6拠点は2月14日から18日にかけ、米マサチューセッツ州ボストンで開かれたアメリカ科学振興協会(AAAS)年次大会に参加しました。研究レベルの高さに加え、国際的な環境の整った「開かれた研究拠点」をアピールすることで優秀な人材の獲得につなげるのが狙いで、出展したブースや共催したワークショップに立ち寄った若手研究者、大学院生、学術雑誌エディター、政策担当者、ジャーナリスト等に対し、WPIのコンセプトと各拠点について紹介しました。

 二年連続となるWPIブース展示は、科学技術振興機構(JST)が主催した日本パビリオンの一部として、15日から17日にかけて公開されました。各WPI拠点の広報・アウトリーチ担当者がブースに立ち、学際性と国際性を重視するWPIの研究環境の良さを伝えた他、来場者との対話をとおして様々な情報や意見を交換しました。

 ワークショップは理化学研究所、筑波大学とWPIが共催したもので、15日に1時間の枠で行われました。「Japan — your next career destination?(参考訳:次の就職先としての日本)」と題されたこのワークショップでは、共催機関それぞれの先進性や、国際化に向けた取り組みを発表しました。

 今年の大会テーマは「The Beauty and Benefits of Science(参考訳:科学の美点と利点)」でした。これについてウィリアム・プレスAAAS会長は、短期的には必ずしも実用に結びつかない基礎研究への支援を得る難しさを、大会直前に発表された論説(Science 339, 627; 2013)で指摘しました。その上で「基礎研究から応用に進み、社会利益を生むに至るまでの全てが、一つの壮大な事業。この理解を研究者の努力によって国民から得ることができれば、研究開発に投資した結果として経済成長を維持することができる」として、大会初日の開会挨拶を締め括りました。

 大会には約4,900人(うち報道関係者900人)が事前に参加登録をした他、登録不要の「ファミリー・サイエンス・デー」にも大勢の親子連れが来場しました。会期の5日間で160を超える様々なテーマのシンポジウムやセミナーが開かれ、生命科学・物理学・工学・社会科学といった分野に関係する教育研究機関・企業・政府機関・メディア等からの参加者が交流しました。

 第1回AAAS年次大会は、1848年に米ペンシルベニア州フィラデルフィアで行われました。これまでにラリー・ペイジ米グーグル最高経営責任者(2007年)、フランシス・コリン米国立衛生研究所長(2001年)、ビル・クリントン元米大統領(1998年)、ビル・ゲイツ米マイクロソフト会長(1997年)など、産官学の著名な人物を講演者として招き、今年で179回目の開催となりました。次回は2014年2月13日から17日にかけ、米イリノイ州シカゴで開催される予定です。

文:京都大学 iCeMS 飯島由多加


世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について

 WPIは、2007年度から文部科学省の事業として開始されたもので、システム改革の導入等の自主的な取組を促す支援により、第一線の研究者が是非そこで研究したいと世界から多数集まってくるような、優れた研究環境ときわめて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を目指しています。今回AAAS年次大会に参加したのは以下の6拠点です。

 2012年10月には、以下の3拠点が新たに採択されました。

アメリカ科学振興協会(AAAS)について

 AAASは科学の発展と社会還元を目的とする、世界最大の非営利・総合学術団体です。米科学誌「サイエンス」の発行元として知られています。1848年から続いている年次大会には例年約50ヵ国から8,000人ほどが来場し、そのうち約4割が研究者です。他にも家族連れや中高生、政府関係者、ジャーナリストといった多様な層が参加します。


写真


会場となったハインズ国際会議場
 

文部科学省と各WPI拠点から参加したWPI関係者ら
 

理化学研究所、筑波大学、WPIが共催したワークショップで、WPIの紹介をする上田光幸文部科学省基礎研究推進室長(右)
 

各WPI拠点の配布物と並べて展示した、(右手前から)英国王立化学会がiCeMSと協力して出版した英科学誌「バイオマテリアルズ・サイエンス」の第1号、北川進iCeMS拠点長やiCeMS科学コミュニケーショングループなどを紹介した「京都大学 by AERA」(朝日新聞出版)の英語版、独科学誌「バイオテクノロジー・ジャーナル」のハイデルベルグ大学-iCeMS合同シンポジウム特集号
 

来場者と対話する京都大学iCeMS国際広報セクションの相山朋加(左)と飯島由多加(右)
 

プレナリー(同じ時間帯には他のイベントを設定せず、来場者全員が参加できるよう組まれた)講義の様子:"Science in the Kitchen" by Dr Nathan Myhvold
 

満席となったシンポジウムの様子:"Wild Weather, Climate Change, and Media: Communicating Science, Uncertainty, and Impact"
 

アラン・レシュナーAAAS最高経営責任者(左)、ウィリアム・プレスAAAS会長(中央)からAAASサイエンティフィック・フリーダム・アンド・レスポンシビリティ賞を授与される、WPIプログラム委員の黒川清政策研究大学院大学アカデミックフェロー・教授(右)
 

フェンウェイ・パークでAAASカブリ科学ジャーナリズム新聞部門賞の受賞スピーチをする米紙ニューヨーク・タイムズのカール・ジマー
 

展示ホールの様子
 

ファミリー・サイエンス・デーの様子