WPI、アメリカ科学振興協会(AAAS)年次大会に出展:2,700人が日本ブースを訪問

2012年2月23日

 文部科学省と世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)全6拠点※は、16日から5日間にわたってカナダ・バンクーバーで開催された Extenal Linkアメリカ科学振興協会(AAAS)年次大会に合同でブースを出展しました。この展示は、京都大学iCeMSが幹事、大阪大学IFReCが副幹事機関となって企画・実施されたものです。

 展示期間は17日からの3日間で、約2,700人がWPIブースを含む日本パビリオン(JST主催)を訪れました。大会全体では、例年を大きく上回る11,000人以上が来場しました。うち約6,000人が家族向けイベント「ファミリー・サイエンス・デー」参加者、約700人がメディア・広報関係者でした。

 WPIブースでは、プログラムと各拠点を紹介するビデオやポスターの他、被引用数において世界の上位1%に入る論文をWPIがどれだけ生み出しているかを示すポスターが掲示されました。文部科学省と各拠点の担当者がWPIトートバッグやWPIカードを配りながら説明し、教育・研究機関の教職員、学生、政府関係者、家族連れなど多様な層の来場者と対話しました。

 「日本の大学について知りたい」と聞きに来る理系志望の高校生や、「日本で研究する場合、日本語はどの程度必要か」と相談に来る大学院生など、日本の科学・技術に期待や関心を持ってブースを訪れる人の姿も多く見られました。WPIは英語が公用語である事について、「研究をする上では不自由せずに済みそう。日常生活がどうなるか興味深い」といった声も聞かれました。

 個別取材に応じたジンジャー・ピンホルスターAAASパブリック・プログラム・ディレクターは、日本からの参加について「非常に歓迎している。約60か国からの参加があるこの国際会議で、今年は日本の存在感も大きかった。来年以降も、日本の積極的な参加を期待している。(AAASの発行する)サイエンス誌に載る年間約900の論文の大半は国際共著で、うち約45%の筆頭著者はアメリカ国外の研究者。世界の様々な課題に立ち向かうには、世界の頭脳を結集し、協調する事が欠かせない」とコメントしています。

 今年の大会テーマは「平らな世界へ:国際知識社会の形成」でした。このテーマについて、Extenal Linkニーナ・フェドロフ写真)AAAS会長は「知識は、その成長や生み出す価値に制限がないという点において、掛け替えのないもの。地域ごとの利益を越えて、国際知識社会を作ることがますます重要になっている」としています( Extenal LinkScience 335, 2012)。

 ブース展示の他、170以上のシンポジウムワークショップ等が随時併行して開催されました。生命科学・物理学・工学・社会科学といった分野の研究者に加え、政策担当者・ジャーナリスト・学芸員など約700人が登壇し、それぞれの研究・活動内容を「最先端の科学・技術」「協働」「コミュニケーション」「教育」「政策」「エネルギー」「食糧」「健康」といったカテゴリーの中のトピックとして論じました。

 「協働」カテゴリーの『学際連携の成功例:理論と実践』シンポジウムでは、3時間の枠でハーバード大学教授など6名が登壇し、「成功する学際プロジェクトもある一方で、研究チーム内の不和や低い生産性などが問題となり、頓挫するケースがある」といった課題などについて発表しました。参加者からは「シニアな研究者が採用を決めるので、学際性よりその研究者の専門分野への貢献をアピールした方が、若手としては得だと感じてしまわないか」などの問題提起があり、会場全体を巻き込む議論が展開しました。

 初日の夜は開会セレモニーとフェドロフAAAS会長による特別講演が、2日目から5日目までの夜はプレナリー(同じ時間帯には他のシンポジウムは開かれず、来場者全員が参加する想定の)講演が行われ、全て無料で一般公開されました。

 3日目のプレナリーでは、Extenal Linkフランク・セスノジョージ・ワシントン大学メディア広報学部長(元CNNワシントン支局長)を座長とするパネル・ディスカッション『科学だけでは不十分』が開かれ、1,400人を超える聴衆が集まりました。全ての客席にキーパッドが配備され、質問ごとの意識調査がその場でできる仕組みになっていました。

 「気候変動の研究をする中で、政治や経済に影響し得るデータを発表する時の外圧」「専門用語を避け分かり易くしようとするあまり、問題を過度に単純化する危険性」「ソーシャルメディア(フェイスブックやツイッター等)との付き合い方」「研究内容の効果的な伝え方」等について、パネリストの Extenal Linkジェームズ・ハンセンNASAゴダード宇宙科学研究所長、インペリアル・カレッジ・ロンドン研究員で科学ジャーナリストとしても活動する Extenal Linkオリビア・ジャドソン博士、カロリンスカ大学の Extenal Linkハンズ・ロスリング教授が、実話や経験談を交えながら議論を進めました。

 第1回AAAS年次大会は、1848年に米ペンシルベニア州フィラデルフィアで行われました。これまでにラリー・ペイジ米グーグル最高経営責任者(2007年)、フランシス・コリン米国立衛生研究所長(2001年)、ビル・クリントン元米大統領(1998年)、ビル・ゲイツ米マイクロソフト会長(1997年)など、産官学の著名な人物を講演者として招き、今年で178回目の開催となりました。次回は2013年2月14日から5日間、米マサチューセッツ州ボストンで開催されます。

文:京都大学 iCeMS 飯島由多加


※WPI全6拠点:


写真


会場となったバンクーバー国際会議場(西館)


会期中の2日間、無料で一般公開された「ファミリー・サイエンス・デー」の様子


日本パビリオンWPIブース


文部科学省と各WPI拠点のブース担当者ら:左から、飯島由多加(京大iCeMS)、松浦雅子さん(九大I²CNER)、坂野上淳さん(阪大IFReC)、藍谷早苗さん(九大I²CNER)とWPIバッグ、大林由尚さん(東大IPMU)、上田光幸さん(文部科学省)、池田進さん(東北大AIMR)、武田浩太郎さん(NIMS MANA)、阿部和雄さん(東大IPMU)


WPIブースで来場者と対話するWPI拠点担当者ら:岩崎琢哉さん(阪大:左)、葉草歩(京大iCeMS:右から2番目)


WPIカード(手前):裏面にはWPI全6拠点を日本地図上に図示


ジンジャー・ピンホルスターAAASパブリック・プログラム・ディレクター(左)、ニーナ・フェドロフAAAS会長(右)


展示ホール:各国の政府機関、大学、学会などの他、企業もブースを出展


シンポジウム『国立研究機関の科学者に言論の自由を:対話再開への道』では、
Extenal Linkカナダ首相に宛てた同日付けの公開状を配布。
Extenal Linkバンクーバー・サン紙Extenal Linkバンクーバー・オブザーバー紙などで報じられた。


ワークショップ『科学の共有:自分と仕事の魅せ方』では、90秒でいかに上手く伝えるかを学び、実際に練習


1,400人以上が集まったプレナリーの会場(バンクーバー国際会議場内)


ポスターセッション:「高校生」「大学生・大学院生」「研究員・教員(写真)」の3部構成で、1日1部ずつ開催


WPIブース展示内容

[ビデオ*] WPI in Brief, Part 1/2: Intro, AIMR, MANA, IPMU

 
 
 

[ビデオ*] WPI in Brief, Part 2/2: iCeMS, IFReC, I²CNER

 
 
 

[ポスター]

 
WPI
(PDF: 3.4MB)
 
トップ1%論文生産率
(PDF: 0.4MB)
東北大学 AIMR
(PDF: 2.4MB)
NIMS MANA
(PDF: 1.6MB)
東京大学 IPMU
(PDF: 18.2MB)
 
京都大学 iCeMS
(PDF: 3.7MB)
大阪大学 IFReC
(PDF: 3.1MB)
九州大学 I²CNER
(PDF: 3.7MB)

関連リンク


Extenal Link世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について

 WPIは、2007年度から文部科学省の事業として開始されたもので、システム改革の導入等の自主的な取組を促す支援により、第一線の研究者が是非そこで研究したいと世界から多数集まってくるような、優れた研究環境ときわめて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を目指しています。

Extenal Linkアメリカ科学振興協会(AAAS)について

 AAASは世界最大の総合学術団体で、米科学誌「サイエンス」を発行し、科学の発展と社会還元を目的としています。1848年から続いている年次大会には例年約50ヵ国から8,000人ほどが来場し、そのうち約4割が研究者です。他にも家族連れや中高生、政府関係者、ジャーナリストといった多様な層が参加します。


*WPI in Brief ビデオ制作チーム:

Susumu IKEDA (AIMR)
Chika KAWABATA (MANA)
Kotaro TAKEDA (MANA)
Tomomi HIJIKATA (IPMU)
Yoshihisa OBAYASHI (IPMU)
Ayumi HAGUSA (iCeMS)
Yutaka IIJIMA (iCeMS)
David KORNHAUSER, narration (iCeMS)
Jun SAKANOUE, producer (IFReC)
Takuya IWASAKI, planning/camera/editing (Osaka University)
Sanae AITANI (I²CNER)
Mika HANAMURA (I²CNER)
Masataka ANDO (Japan Society for the Promotion of Science)
Mitsuyuki UEDA (WPI Program Supervisor, MEXT, Japan)