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インドの三日熱マラリアの肝臓期モデル

本研究のイメージイラスト(©高宮ミンディ/京都大学アイセムス - CC BY 4.0

 京都大学アイセムス(物質-細胞統合システム拠点)の長谷川光一特定拠点講師らの研究グループは、複数のインドの研究グループと共同でインドの三日熱マラリアがヒトの肝臓に感染し成長し分化することを研究することができるモデルを開発しました。

 マラリアは、蚊によって媒介されるマラリア原虫によって引き起こされる感染症です。世界の人口の約半分の32億人がその脅威にさらされており、世界の死亡原因の第3位に挙げられます。人がマラリア原虫に感染した蚊に刺されると、原虫は肝臓の細胞に感染します。原虫は、肝臓で発生・増加し(肝臓期)、十分に増加すると肝臓細胞を破裂させて血中に移動します。さらに、赤血球に感染し性分化を行い (赤血球期)、様々な病状が生じます。またその血液を蚊が吸い、蚊の中で増殖・分化し (昆虫期)、この原虫に感染した蚊によって人への感染が広がります。

 人に感染するマラリア原虫の中でも、三日熱マラリアは重篤な症状を示す1種です。マラリアの感染には人の遺伝的背景が影響するため、地域によって主たるマラリアは異なるものの、三日熱マラリアは最も広く分布しており、アジアや中南米では主なマラリアといえます。他のマラリアと異なり、三日熱マラリアは肝臓期で潜伏可能という特徴があり、潜伏後数日から数年後に再発することが分かっています。このため、症状のない潜伏患者も多く、根絶が難しいマラリアです。このことから、三日熱マラリアの肝臓期に対する薬剤が必要とされているものの、現在の肝臓期に対する薬剤は多くの副作用がみられ、服用可能な患者の遺伝的背景も限られているという課題があります。このため、肝臓期に対する新薬の開発が求められています。

 三日熱マラリアの肝臓期の新薬の開発を難しくしている理由には、三日熱マラリアの肝臓での感染・発生・潜伏を研究したり、薬剤の効果を確かめたりできる良いモデルが無いことが挙げられます。また、三日熱マラリアの地域ごとの違いも薬剤の開発を難しくしています。

 そこで本研究では、インド国立生命科学研究所や、インド国立マラリア研究所、顧みられない病気研究財団、インド国立幹細胞生物学再生医学研究所の研究者と共同で、インドの三日熱マラリア患者の血液から血球細胞をとりだしてiPS細胞を作製し、これを感染に適した肝臓の細胞に分化させました。同時に、三日熱マラリア患者の血液からマラリア原虫を取り出し、インドの蚊に感染させ蚊の中で増やしました。この蚊から原虫を取り出し、iPS細胞から作った肝臓細胞に感染させることで、研究や薬剤開発に使用可能な、インド三日熱マラリア肝臓感染モデルの作製に成功しました。

 このモデルによって、インドの三日熱マラリアが、どうやって肝臓細胞に感染するのか、どうやって肝臓細胞で増殖・分化するのかといったことが研究可能となります。またこれを発展させれば、どうやって血液中に出てくるのか、どうやって休眠(潜伏)するのか、どうやって休眠から活動再開するのか、なども研究することが可能となると考えられます。三日熱マラリアの肝臓期の仕組みが分かれば、その仕組みに対する薬剤の開発も期待できます。

 またこのモデルを使えば、三日熱マラリアの肝臓期に効果がある薬剤を既存の薬剤から探し出すことも、新しく作った薬剤の効果を確かめることもできます。今回の成果が、持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献できる研究として、三日熱マラリアの特効薬の開発へつながり、世界中の多くの人々の命が救われることを期待しています。

 この成果は、2020年6月22日に学術誌Malaria Journalにて発表されました。

書誌情報

  • 論文タイトル:“Plasmodium vivax liver stage assay platforms using Indian clinical isolates”
    (参考訳:インドにおける臨床により単離されたマラリア原虫の肝細胞ステージを解析するためのプラットフォームの構築)
  • 著者:Pradeep A. Subramani, Neha Vartak‑Sharma, Seetha Sreekumar, Pallavi Mathur, Bhavana Nayer, Sushrut Dakhore, Sowmya K. Basavanna, Devaiah M. Kalappa, Ramya V. Krishnamurthy, Benudhar Mukhi, Priyasha Mishra, Noriko Yoshida, Susanta Kumar Ghosh*, Radhakrishan Shandil, Shridhar Narayanan, Brice Campo, Kouichi Hasegawa*, Anupkumar R. Anvikar, Neena Valecha and Varadharajan Sundaramurthy*(*は責任著者)
  • Malaria Journal|DOI: 10.1186/s12936-020-03284-8

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