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新しい糖脂質蛍光プローブを開発して細胞膜の“筏ナノドメイン”を解明-ウィルスや毒素の細胞内侵入機構の解明に新しい光-

43355067_lCopyright : William Roberts/123rf

 木曽真 京都大学(総長:山極壽一)物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)・岐阜大学(学長:森脇久隆)応用生物科学部教授、安藤弘宗同准教授、河村奈緒子同研究支援員、楠見明弘 京都大学iCeMS・沖縄科学技術大学院大学(学長:ジョナサン・ドーファン)教授、鈴木健一 京都大学iCeMS准教授らの研究グループは、細胞膜の構成成分で、細胞膜の重要な働きをになう特殊な糖脂質、ガングリオシド*1の細胞膜上での動きや分布の可視化に世界で初めて成功しました。

 さらに、ガングリオシドが、GPIアンカー型受容体*2とよばれる種類の受容体と細胞膜上で結合したり離れたりする様子を可視化することにも成功し、さらに、この結合には、コレステロールが必要なことを見いだしました。すなわち、これら3種の分子が、会合体を作ることを世界で初めて証明しました。この発見の画期的なところは、以下の3点です。
 (1) これら3種の分子は細胞膜内で集合して「筏(いかだ)ドメイン」*3と名付けられるナノドメインを作る可能性がこの25年間疑われてきました。筏ナノドメインは受容体の機能発現やウィルス・毒素などの細胞内侵入に重要という強い意見もあり、生細胞内で本当に存在するかどうかは大きな課題でした。本研究で初めて、これら3種分子を含むナノドメインの存在が証明されました。
 ガングリオシドが筏ナノドメインに出入りする様子を1分子ずつ見たり、筏ナノドメインが動く様子を解析することにも成功しました。これらによって、
 (2) ガングリオシドは筏ナノドメインを作るという重要な働きがあることが分かりました。
 (3) ガングリオシドは10~50ミリ秒(1秒の1/100~1/20)の時間スケールで筏に入っては出ていくという、きわめて動的な制御がなされていることが分かりました。これによって、何故いままで、筏ナノドメインが生きている細胞内で見つからなかったかも分かりました。ナノサイズという小ささに加えて、分子がきわめて動的に出入りするので、普通の方法では見えなかったのです。

 では、本研究では、どのような方法で可視化に成功したのでしょうか?ガングリオシドは天然のままでは見えません。そこで蛍光を発する小分子をガングリオシドに結合させて、その蛍光をマーカー(プローブ=探針、と呼びます)として追跡しました。今までの方法では、ガングリオシドの特定の部分に1個だけプローブをつけるのは困難なうえに、プローブ結合によってガングリオシドの機能を損なっていました。今回、研究グループは、蛍光分子とガングリオシドの複合体の全化学的合成に成功し、さらに17種の中から機能を損なわないものを選ぶことで、これらの問題をクリアしたのです。さらに、生細胞の細胞膜中で、蛍光ガングリオシドを1分子イメジングにより可視化し、1分子追跡することで、ガングリオシドの動的な動きを手に取るように見ることができました。

 インフルエンザウィルスやコレラ毒素のような病因物質が細胞内に侵入するときには、細胞膜の筏ナノドメインを上手に乗っ取って侵入することが示唆されています。本研究で開発された方法と得られた結果は、侵入機構の解明のための大きな一歩であるばかりでなく、侵入を阻止する薬剤開発にも寄与するものです。

続きを読む(ニュースリリースPDF: 5.5MB)

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論文著者:(左から)河村奈緒子さん、鈴木健一准教授、安藤弘宗准教授、楠見明弘教授、木曽真教授


 本研究は文部科学省 科学研究費助成事業(研究代表 木曽真,課題番号22380067; 安藤弘宗, 23688014, 15H04495; 楠見明弘, 24247029; 鈴木健一, 24370055, 15H04351)、文部科学省 WPIプログラム(京都大学 物質-細胞統合システム拠点 = iCeMS)および科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST(研究分担者 楠見明弘)によって推進され、京都大学 物質-細胞統合システム拠点・岐阜大学応用生物科学部で行われたものです。

 本成果はロンドン時間2016年4月4日16時(日本時間5日午前0時)の週に米科学誌「Nature Chemical Biology (ネイチャー・ケミカル・バイオロジー)」オンライン速報版で公開されました。

 


文献情報

Raft-based interactions of gangliosides with a GPI-anchored receptor

Naoko Komura, Kenichi G. N. Suzuki, Hiromune Ando, Miku Konishi, Machi Koikeda, Akihiro Imamura, Rahul Chadda, Takahiro K. Fujiwara, Hisae Tsuboi, Ren Sheng, Wonhwa Cho, Koichi Furukawa, Keiko Furukawa, Yoshio Yamauchi, Hideharu Ishida, Akihiro Kusumi*, & Makoto Kiso*

*Corresponding author

Nature Chemical Biology | Published Online 4 April 2016
doi: 10.1038/nchembio.2059


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