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脂溶性化合物を細胞外へ絞り出す多剤排出ポンプの機構解明

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ABCB1タンパク質は、タンパク質構造が大きくねじれることで、脂溶性化合物を細胞外に絞り出す。

 京都大学アイセムス(物質-細胞統合システム拠点)の植田和光特定教授、小段篤史特定助教らの研究グループは、細胞の多剤排出ポンプであるMDR1(別名ABCB1)が、様々な構造の脂溶性有害物をどのような機構で認識し、細胞外へ排出するかを明らかにしました。本成果は、国際的科学誌FEBS Lettersで12月4日にオンライン公開されました。

 研究グループの植田教授らが35年前に見出したABCB1遺伝子は、細胞膜に存在する膜タンパク質をコードしており、我々の健康の維持に関わります。現在では、数え切れないほど確認されている真核生物のABCタンパク質注1)の中で、最初に見つかりました。ABCB1は、様々な構造の脂溶性化合物を細胞外へ排出する働きを持ち、天然に存在する有害なアルカロイド注2)などが体内に取り込まれるのを防ぐとともに、脳など、重要な組織に侵入することを防ぐことで、我々の健康を守っています。

 一般的に、酵素は、特定の化合物を認識することにより、酵素の構造に変化が起こり、反応が始まります。ABCB1の場合、様々な構造の脂溶性化合物を認識し排出することから、その機構は、他の一般的な酵素とは大きく異なっていることが予想されていましたが、これまで謎でした。

 そこで、私たちは、温泉に住む単細胞の真核生物がもつABCB1とよく似た膜タンパク質の輸送前と輸送後の詳細な構造を明らかにし、それらを比較することによって、ABCB1輸送機構を明らかにしました。

  1. MDR1は、輸送前には上(細胞外側)が閉じ、下(細胞内側)が開いた構造をしており、内部に大きな空洞が存在します。一番上部は、複数の疎水的な性質を持ったアミノ酸のネットワークがあることで、閉じた状態で安定しています。(疎水的なアミノ酸どうしは、引き寄せ合う性質があります)
  2. 疎水的な脂溶性化合物は、細胞膜中を通過中にABCB1の内部の大きな空洞に取り込まれ、空洞の天井に存在する疎水的なアミノ酸に引き寄せられます。
  3. 脂溶性化合物が天井の疎水的ネットワークと接触すると、それまで安定していたアミノ酸間の疎水的ネットワークが不安定になり、構造の変化が始まります。
  4. 構造変化が始まるときに、ABCB1の細胞内側部分に二つのATPが結合すると、タンパク質全体が大きくねじれ、絞り出すように脂溶性化合物を細胞外へ押し出します。
  5. 脂溶性化合物が排出された後、ATPが加水分解されタンパク質から遊離すると、ABCB1は元の輸送前の構造に戻り、次の輸送サイクルが始まります。

 ABCB1は、脂質化合物を細胞外へ排出するため、経口投与薬の吸収・排泄に大きな影響を与えます。今回、明らかにした輸送機構により、ABCB1によって排出されにくい薬や脳腫瘍の治療薬などのデザインに役立つと期待されます。


詳しい研究成果について

脂溶性化合物を細胞外へ絞り出す多剤排出ポンプの機構解明

書誌情報

  • 論文タイトル:“ABCB1/MDR1/P‐gp employs an ATP‐dependent twist‐and‐squeeze mechanism to export hydrophobic drugs”
    (参考訳:ABCB1(MDR1)のひねりながら絞り出すメカニズムについて)
  • 著者:Atsushi Kodan, Ryota Futamata, Yasuhisa Kimura, Noriyuki Kioka, Toru Nakatsu, Hiroaki Kato and Kazumitsu Ueda
  • FEBS Letters|DOI: 10.1002/1873-3468.14018

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