iCeMSフォトツアー

iCeMS 本館

世界トップレベルの研究成果を生みだすべく設計されたiCeMSの施設には、細胞生物学、化学、物理学の融合を目標に掲げるiCeMSならではのこだわりが散りばめられています。京大正門前のバス停のまんまえに位置するiCeMS本館。さっそく、中をのぞいてみましょう。

1階中庭

中央の植えこみはiCeMSのシンボルともいえる細胞をかたどったもの。春には藤と桜が花を咲かせます。

1階研究者室

分野間の垣根を越えた議論や交流がつねに生まれるよう、研究室ごとの区切りや壁は設けません。ガラス張りの開放的な設計です。

2階交流ラウンジ

東大路通側はガラス張りの開放的な空間。イチョウ並木の通りを眺めながらの昼食も気持ちがいいです。ミーティングをしたり、一人黙々と作業をしたり、ときにはパーティ会場にも変身します。

ONE POINT

和の要素をとりいれた障子やすだれは、外国人研究者に好評です。

2階セミナー室

約80人収容のこの部屋は、シンポジウムやイベントに活用されています。京都大学宇治キャンパスや岐阜大学にあるサテライト・オフィスと通信・中継も可能。

ONE POINT

ピアノは設立時の拠点長、 中辻憲夫先生からの寄贈品。 昼休みには職員の弾く演奏が 聞こえてくることもありますよ。
五山の送り火の日には、大文字が よく見えます。

2階 共用実験室/共通機器室

通常、実験機器は各研究室がそれぞれでそろえるもの。iCeMSでは設備や機器をシェアすることで、経済的な負担を軽減しています。共用実験室で隣りあわせたほかのグループ・メンバーとの何気ない雑談から、新しいアイデアが生まれることもあります。これも学際融合をめざすiCeMSならではの環境づくり。本間貴之さんは、共用機器の管理、メンテナンスを担当しています。

3階細胞培養室

土足厳禁の培養室で扱うのは、ES細胞やiPS細胞。ヒトES細胞を取り扱うインキュベーター(細胞培養器)はひとつひとつに文部科学省への登録が必須です。インキュベーター内は37℃に保ち、ヒトの体内に近い環境を整えています。殺菌力の高いエタノールを手に吹きかけて、手の先だけを実験台に入れる「バイオベンチ」のなかで実験に臨みます。
亀井謙一郎さんが見ているのは作製されたばかりの若いiPS細胞。チリチリとした突起がたくさん見えます。これが成長すると、よく見る「あの形」に。

iCeMS研究棟

iCeMS研究棟は本館から北に約200メートルの距離にあります。

1階-2階研究者室

研究室ごとの仕切りや壁がないのは本館と同じですが、こちらは開放的な階段が部屋のまんなかにあり、階が違っても自然と交流が生まれるよう工夫されています。

ミーティングルーム

思いついたときにいつでもフランクにディスカッションができる環境です。もちろんドアはガラス張り。

ONE POINT

研究棟とプロジェクト・ラボのあいだに置かれた西洋風の机と椅子は研究者たちのお気に入り。ここで昼食を食べたりもします。
研究者のデスクの周りには、 すごしやすい空間にするための こだわりがたくさん。

2階プロジェクト・ラボ

廣理英基さんがiCeMSで開発に成功した、電波と光波(赤外線)のあいだの周波数をもつ「テラヘルツ電磁波」の強度は、なんと世界一。日々、最高記録を更新しつづけるラボには、世界中から見学希望者がやってきます。テラヘルツ発生技術の向上は、コンピュータなどの高速化・省エネ化につながる新現象の発見や、それを活かした新しい製品開発、さらには空港などの危険物や薬物などを検知するセキュリティ設備の技術革新にもにつながります。廣理さんは、電磁波と細胞を結びつければなにが生まれるのかという、だれも足を踏み入れていない未知の課題に挑戦中。
ずらっと並ぶルーペのような道具は、テラヘルツ電磁波を生みだす器具。

3階生化学系実験室

生き物が働く仕組みを理解するために、DNAを切り貼りして、目的の遺伝子を作製したり、細胞からタンパク質を精製して、生化学的な性質を解析したりしています。マイクロピペットと呼ばれる、微量の液体を出しいれできる実験器具が、大活躍します。

4階化学系実験室

棚に並んだ薬品やボコボコと音をたてるフラスコ、ガラスに走り書きされた化学式。理科教室を思いだすような、 いわゆる「化学」のイメージどおりの実験室です。古川修平さんが追究するのは多孔性材料という小さな穴の空いた化学物質を使って、気体を自由に操る技術。1ミリリットルの液体は、気化すると1リットル以上の体積に、1000倍以上ふくらみます。小さい穴に気体を安全に圧縮し閉じ込める技術は、天然ガス自動車の燃料タンクや大気中の二酸化炭素の捕集に応用できます。なかでも、閉じ込めた気体を外からシグナルを与えて、自在に取り出す技術を研究中。

機械からにょきっと手が伸びているようにも見える外観が印象的な通称「グローブボックス」。黒い部分に肩まで腕をさしこみ、外気から遮断された状態で作業ができます。内部には窒素などの不活性ガスが充満しています
通称「電子レンジ」。原理は市販のものと同じで、マイクロ波で試料の分子を振動させることで全面を均質に加熱します。熱で沸かすと2時間かかる液体を数分で加熱することが可能な実験室の人気者。一般の電子レンジと異なるのは、爆発することが想定された「防爆性」。爆発しても容器が飛び散らないように頑丈につくられています。

ONE POINT

iCeMSの公用語は英語。外国人研究者の割合は30%におよびます。

※本記事は、アイセムスのニュースレター「Our World Your Future vol.1」に掲載されたもので、すべて掲載当時の情報です。