研究

2019年10月7日

二酸化炭素を捉えて有機分子へ! プロペラ様の構造をもつ多孔性材料の開発

今回開発された多孔性配位高分子(PCP)は、プロペラのような形の分子構造を持っており、二酸化炭素を吸着して有用な有機分子に効率的に変換することができる。(イラスト:高宮ミンディ)

 京都大学アイセムス(物質―細胞統合システム拠点)の北川進(きたがわ・すすむ)拠点長・特別教授、大竹研一(おおたけ・けんいち)特定助教、細野暢彦(ほその・のぶひこ)客員講師(兼 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 講師)らの研究グループは、中国江蘇師範大学の研究グループと共同で、選択的に二酸化炭素を捉えて有用な有機分子に変換できる新しい多孔性材料の開発に成功しました。

 二酸化炭素は燃焼や生物の呼吸、発酵など、我々の生活の様々な場面で生成し、地球上に広く存在する化合物ですが、同時に温室効果をもつガスとしても知られています。近年、化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)の使用の増加により大量の二酸化炭素が地球上に排出されることによる地球温暖化の懸念が高まっています。こうした背景から、二酸化炭素の排出量を削減をする技術や排出された二酸化炭素を有効活用する技術に高い注目が集まっています。

 本研究で開発した多孔性材料は、有機分子と金属イオンからなるジャングルジム状のネットワーク構造でできており、内部にナノサイズの小さな穴(細孔)を無数に持っています。この細孔は二酸化炭素に高い親和性を持っており選択的に二酸化炭素だけを細孔中に取り込むことができます。さらに、細孔に触媒能を持つ金属イオン部位が規則的に配置されており、取り込んだ二酸化炭素分子を原料として細孔内で高効率な触媒反応を起こすことが期待されます。実際に、この材料を利用して二酸化炭素をエポキシドに付加させる変換反応を試みたところ、カーボネートが高収率、高効率で生成することがわかりました。反応の性能の指標となる二酸化炭素の変換におけるターンオーバー数2 は39,000 に達し、すでに報告されている多孔性材料の中でも最高の性能を示しました。

 今回開発した多孔性材料は、二酸化炭素を取り込むだけでなく、二酸化炭素の反応性を高め有用な有機分子に変換させることができる材料です。また、この反応は付加反応であるため副生成物を生じず、有機溶媒も用いないことから環境に優しい反応です。今回の成果は、地球温暖化の主因ともされる二酸化炭素を安価に資源として活用する技術への応用が期待されます。

 本成果は英国の学術誌 Nature Communications 電子版に9 月25 日(米国東部標準時間)に掲載されました。

詳しい研究成果はこちら

(参考訳:二酸化炭素を捕捉し高効率に固定化する柔軟な多孔性配位高分子)

“Carbon dioxide capture and efficient fixation in a dynamic porous coordination polymer”

書籍情報

DOI: 10.1038/s41467-019-12414-z

著者:Pengyan Wu, Yang Li, Jia-Jia Zheng, Nobuhiko Hosono, Ken-ichi Otake, Jian Wang, Yanhong Liu, Lingling Xia, Min Jiang, Shigeyoshi Sakaki & Susumu Kitagawa