研究

2022年12月12日

過剰なコレステロールを感知し コレステロールの恒常性を維持するメカニズムの解明

細胞膜で働くコレステロール輸送体タンパク質ABCA1と小胞体膜で働くコレステロール転送タンパク質Aster-Aが協調的に機能し、細胞膜内膜のコレステロール(貨物)量を低く抑えている。(©高宮ミンディ/京都大学アイセムス)

 京都⼤学アイセムス(⾼等研究院 物質―細胞統合システム拠点)の植⽥和光特定教授、⼩笠原史彦特定研究員らの研究グループは細胞膜中のコレステロール濃度を感知し恒常性を保つメカニズムの⼀端を明らかにしました。
 コレステロールは、私たちの⾝体のすべての細胞の細胞膜の主成分であり、細胞内コレステロールの60〜90%が細胞膜中に存在します。⼀⽅、細胞内のコレステロール量は、⼩胞体という細胞⼩器官に存在するセンサー(SCAP/SREBP)により維持されていると考えられています。しかし、⼩胞体上のSCAP/SREBPが、細胞膜のコレステロール濃度の変化をどのようにして感知しているのか不明でした。
 今回、研究グループは、細胞膜内層のコレステロールは、細胞膜に埋まっているABCA1タンパク質によって外層へ輸送されることによって低濃度に維持されており、細胞膜内層のコレステロールが過剰になった場合は⼩胞体膜上のAster-Aタンパク質によって⼩胞体に輸送されること、それによってSCAP/SREBPが細胞膜コレステロールの濃度変化を感知し、細胞のコレステロール恒常性が維持されていることを明らかにしました。
 本結果は、2022年12⽉9⽇に、Journal of Biological Chemistry 誌に発表されました。

詳しい研究成果について

過剰なコレステロールを感知し コレステロールの恒常性を維持するメカニズムの解明

書籍情報

論文タイトル:“ABCA1 and cholesterol transfer protein Aster-A promote an asymmetric cholesterol distribution in the plasma membrane”(参考訳:ABCA1 とコレステロールトランスファー蛋白質Aster-Aは細胞膜のコレステロールの非対称的な分布を形成している)
著者:Fumihiko Ogasawara、Kazumitsu Ueda

Journal of Biological Chemistry |DOI: 10.1016/j.jbc.2022.102702