研究

2023年12月1日

蛍光タンパク質StayGoldの性能アップ -分子や膜の動態を時空間的に高解像で観察する技術-

 理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター細胞機能探索技術研究チームおよび光量子工学研究センター生命光学技術研究チームの宮脇敦史チームリーダー、安藤亮子研究員、細胞機能探索技術研究チームの下薗哲研究員、京都大学アイセムス(高等研究院 物質-細胞統合システム拠点)の藤原敬宏特定准教授らの共同研究グループは、蛍光タンパク質StayGoldを改良し、生細胞における分子や生体膜の動態を、蛍光の褪色(たいしょく)の心配なく観察する技術を確立しました。
 本研究成果は、バイオイメージングの広範囲において褪色問題の解消をもたらし、蛍光観察の時空間の幅の飛躍的な拡張と、定量性を求める創薬開発研究に貢献することが期待されます。
 宮脇チームリーダーらが2022年に発表したStayGoldは褪色しにくい(光安定性が高い)という利点がありますが、二量体を形成するため、分子や膜を標識する際に人工構造物の生成をもたらす危険性があります。今回、共同研究グループは、StayGoldの結晶構造を決定し、その情報を基に単量体変異体mStayGoldを開発しました。また、StayGoldの直列連結体tdStayGoldの分散性を高めた改良版を開発しました。これらを利用することで、ゴルジ体膜やミトコンドリア内膜、アクチン線維や微小管などの細胞骨格、細胞分裂の際に見られる染色体凝縮タンパク質などの高精細、高速、長時間の観察に成功しました。
 本研究は、科学雑誌『Nature Methods』オンライン版(11月30日付:日本時間12月1日)に掲載されました。

詳しい研究成果について

蛍光タンパク質StayGoldの性能アップ -分子や膜の動態を時空間的に高解像で観察する技術-

書誌情報

論文タイトル:“StayGold variants for molecular fusion and membrane targeting applications”
著者:Ryoko Ando, Satoshi Shimozono, Hideo Ago, Masatoshi Takagi, Mayu Sugiyama, Hiroshi Kurokawa, Masahiko Hirano, Yusuke Niino, Go Ueno, Fumiyoshi Ishidate, Takahiro Fujiwara, Yasushi Okada, Masaki Yamamoto, Atsushi Miyawaki

Nature Methods|10.1038/s41592-023-02085-6