研究

2024年9月5日

多孔質膜で水汚染物質を除去・検出する技術を開発 〜ナノ空間がつながった空間ネットワーク膜〜

金属錯体多面体(MOP)を連結した空間ネットワーク膜(PNM)により、水の中に含まれる医薬品や化粧品の成分を取り除き、さらにその存在を確認することが可能になった ( ©The Authors of “Pore-networked membrane using linked metal-organic polyhedra for trace-level pollutant removal and detection in environmental water” Commun Mater 5, 161 (2024). (CC BY-NC-ND 4.0))

 京都大学アイセムス(高等研究院 物質―細胞統合システム拠点:WPI-iCeMS)のワン ザオミン 博士研究員、パチェコ-フェルナンデス イダイラ 日本学術振興会 外国人特別研究員(現・オランダグローニンゲン大学博士研究員)、古川修平 教授らの研究グループは、「空間ネットワーク膜(Pore-Networked Membrane: PNM)」という新しい多孔質膜を開発しました。この技術は水の中に含まれる医薬品や化粧品の成分を取り除き、さらにその存在を確認できるものです。

 水環境中に含まれる微量の医薬品や、化粧品・殺虫剤・日焼け止め液などのパーソナルケア製品(PPCPs)の成分は、健康や生態系に重大な影響を及ぼす可能性があることから、これらを効率的に検出し除去する技術が求められています。従来の水処理技術では、汚染物質の除去と検出は別々に行われ、複雑で時間がかかる工程を経る必要がありました。

 本研究では、金属錯体多面体(MOP)という微細なナノ空間をもつ分子をつなげ、高分子膜中に埋め込むことでPNMを作成しました。この空間により対象のPPCPs分子を選択的に取り込み除去することに成功しました。また補足した分子を放出する方法も開発し、分析装置と組み合わせることでppb以下での極微量検出も可能になりました(ppbは10億分の1を表す:1 ppbは1トンの水の中に対象物質が1 mg入っている濃度)。

 この技術は水中の環境汚染物質のみならず、液体中の微量な物質除去と検出に応用できる成果であり、環境問題のみならず医療分野などへの発展も期待されます。

 本成果は 2024 年 8 月 20 日に、英国出版社 Springer Nature の雑誌である「Communications Materials」オンライン版で公開されました。

詳しい研究成果について

多孔質膜で水汚染物質を除去・検出する技術を開発 〜ナノ空間がつながった空間ネットワーク膜〜

書誌情報

論文タイトル:“Pore-networked membrane using linked metal-organic polyhedra for trace-level pollutant removal and detection in environmental water”
著者:Zaoming Wang, Idaira Pacheco-Fernández, James E. Carpenter, Takuma Aoyama, Guoji Huang, Ali Pournaghshband Isfahani, Behnam Ghalei, Easan Sivaniah, Kenji Urayama, Yamil J. Colón, Shuhei Furukawa

Communications Materials (Springer Nature)|DOI: 10.1038/s43246-024-00607-z