研究

2025年3月18日

ファンデルワールス力を用いた新しい多孔性材料

Crystal structure of van der Waals open framework-1 (WaaF-1)

 京都大学アイセムス(高等研究院 物質ー細胞統合システム拠点:WPI-iCeMS)の徳田駿 修士課程学生(当時・工学研究科合成・生物化学専攻、現・マックスプランク固体研究所博士課程学生)と古川修平 教授の研究グループは、「多孔性ファンデルワールスフレームワーク(van der Waals open framework: WaaF)」という新しい多孔性材料を開発しました。この技術を用いることにより、従来では困難であった繰り返しリサイクルできる安定な多孔性材料の設計が可能となりました。
 
 気体分離・貯蔵技術はエネルギー効率向上と安全性の観点から重要であり、これまで様々な多孔性材料の開発と工業的活用が進められて来ました。しかしながら、従来の多孔性材料は一度劣化した場合には新たなものと交換する必要があり、経済的・環境負荷的な観点で課題が残されていました。

 本研究では弱い結合を用いることで、劣化しても再生が可能な多孔性材料の開発に成功しました。具体的には、積み木のように互いに密着しながら並ぶことのできる金属錯体多面体(MOP)という八面体型の分子を用い、分子同士が引き合う弱い力(ファンデルワールス力)を最大限活用して分子を並べ、網目状の安定な多孔性材料「WaaF」を合成しました。強い結合の場合、一度結合が切れると修復できません。一方で、弱い力が集まって作られたWaaFでは、性能が劣化した際にはMOP同士を引き剥がし溶媒に溶かした後、再びMOP分子を並べ直してWaaFにすることにより、多孔性材料としての機能が復活することが確認されました。

 この技術はMOP分子のみならずあらゆる多面体の形状をした分子に適用することができるため、ガス産業の様々なニーズに応じて再生可能な多孔性材料が開発されることが期待されます。

 本成果は 2025年3⽉18⽇19 時(⽇本時間)に、英国出版社 Springer Nature の雑誌で ある「Nature Chemistry」オンライン版で公開されました。

詳しい研究成果について

ファンデルワールス力を用いた新しい多孔性材料

書誌情報

論文タイトル:"Three-dimensional van der Waals Open Frameworks"
著者:Shun Tokuda, Shuhei Furukawa

Nature Chemistry | DOI: 10.1038/s41557-025-01777-0