細胞外カルシウムが不要細胞除去に重要! 細胞膜貫通領域どうしを近づけるのりの働きの発⾒
京都⼤学アイセムス(⾼等研究院 物質−細胞統合システム拠点)の鈴⽊淳教授、チョウ・パンパン特定研究員、圓岡真宏特定助教、蚊⾕光⽒(⼤学院⽣)、童友⽒(⼤学院⽣)、ダニエル・パックウッド講師等の研究グループは、アイセムス連携PIの⽥中求特任教授、鈴⽊量特定助教、徳島⼤学の⼩迫英尊教授と協⼒し、⽣体内において不要な細胞を除去する分⼦メカニズムを明らかにしました。この成果は、9⽉11⽇に英国科学雑誌ネイチャー・コミュニケーション誌に発表されました。
⼈の⽣体内では毎⽇10億−100億個の細胞が細胞死を起こします。細胞死を起こした細胞が⽣体内に残ると細胞内容物が漏れ出て炎症を引き起こすため、速やかにマクロファージ等の貪⾷※2細胞に除去される必要があります。死細胞は、貪⾷細胞に⾒つけてもらうために、スクランブラーゼというタンパク質を⽤いて細胞膜を構成する脂質の⼀つホスファチジルセリン(PS)を“死んだ⽬印”として細胞表⾯に提⽰します。しかし、スクランブラーゼが死細胞で活性化する仕組みについては、完全には理解されていませんでした。
今回、研究グループは、スクランブラーゼの活性化には細胞外カルシウムが重要なことを発⾒しました。通常カルシウムは、細胞外から細胞内に流⼊することで様々なタンパク質を活性化することが知られています。しかし、スクランブラーゼの活性化には、細胞外から細胞内まで⾄らず、その途中の膜貫通領域へのカルシウムの流⼊が重要であることが分かりました。この際、カルシウムが“のり”として作⽤することで、2つの膜貫通領域を近づけることでスクランブラーゼが活性化することが⽰されました。
今回対象としたスクランブラーゼは脳の神経細胞に強く発現しており、不要な細胞の除去により脳の健康維持に関与していると考えられています。今後、⾒出された不要細胞除去システムの理解に基づき、それを⼈⼯的に操作することで、脳内における不要細胞を除去し脳内健康を維持する新しい技術の開発が期待されます。
詳しい研究成果について
書誌情報
論文タイトル:“Extracellular calcium functions as a molecular glue for transmembrane helices to activate
the scramblase Xkr4”(細胞外カルシウムはスクランブラーゼXkr4を活性化するための膜貫通領域の分⼦接着剤として
機能する)
著者:Panpan Zhang, Masahiro Maruoka, Ryo Suzuki, Hikaru Katani, Yu Dou, Daniel M.
Packwood, Hidetaka Kosako, Motomu Tanaka, and Jun Suzuki