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ABCタンパク質と生物の進化 コレステロールがシグナル分子に

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ABCA1タンパク質はコレステロールを細胞膜の内側から外側に反転させ、これにより、外部の刺激から体を守る皮膚の能力が強化されます。このことが脊椎動物の進化に重要な役割を果たしたと考えられます。 (©高宮ミンディ/京都大学アイセムス)

 京都大学アイセムス(物質-細胞統合システム拠点)の植田和光特定教授、小笠原史彦特定研究員、小段篤史特定助教らの研究グループは、ABCタンパク質が生物の進化において果たした役割についての新説を発表しました。本説は、国際的科学誌FEBS Lettersで、10月1日にオンライン公開されました。

 ATPを利用し、細胞膜を介してさまざまな物質輸送を行うABCタンパク質は、地球上のすべての生物が持っています。すべての生物で働いているということは、ABCタンパク質が生物の進化のごく初期から働いていたことを示します。そのため、進化を考えるうえでよいモデルとなります。

 進化のごく初期の細胞では、ABCタンパク質が、糖やアミノ酸などの栄養素を細胞内に取り込む働きや、細胞膜の外側にもう一枚の膜(外膜)を作るために、膜脂質を細胞膜から外膜へと運ぶ働きをもち、外部環境からのストレスから細胞を守る働きに役立っていたと考えられています。また、植物が上陸した際には、ABCタンパク質が、長鎖脂肪酸を分泌し、ワックスやクチクラが全身の表面を覆うことにより、植物の表面からの水分の蒸発と病原菌の侵入を防ぐことができるようになったと考えられます。光合成のために、葉を広げ、大きな表面積を持つようになった植物の繁栄のためには、なくてはならない働きです。さらに、動物が上陸した際、植物と同様に、ABCタンパク質が、極長鎖脂肪酸を表皮に分泌することで、細胞の隙間に何層もの細胞からなる表皮を発達させ、身体の表面からの水分の蒸発と病原菌の侵入を防ぐことに成功しました。

 このようにABCタンパク質は生物の進化において重要な役割を果たしてきました。さらに今回、私たちは、脊椎動物の進化において、ABCタンパク質の一つであるABCA1とコレステロールが特に重要な役割を果たしたという新説を提唱しました。

 ABCA1は、善玉コレステロールとよばれるHDLの産生を担うABCタンパク質として知られています。我々の研究から、ABCA1がHDLの産生のみならず、コレステロールを細胞膜内で動かす活性を併せ持つことが明らかになりました。細胞膜内でコレステロールが動くことで、コレステロール自身が細胞増殖などを調節するシグナル分子として機能できるようになります。

 脊椎動物は、ABCA1の働きにより、コレステロールをシグナル分子として活用することを可能にし、他の生物にはない多様で複雑な体のつくりと、環境への適応能力を獲得した可能性があります。これまで、コレステロールは細胞膜を強くするといった物理的な機能と、ステロイドホルモンの材料となることが主な生理的役割であると考えられてきました。植田教授らは、脊椎動物において、これまで予想しなかったシグナル分子という重要な役割をコレステロールが果たしていることを提唱しました。今後、コレステロールの関係する病気の治療法などを根本から見直すことにつながることが期待されています。

詳しい研究成果について

ABCタンパク質と生物の進化 コレステロールがシグナル分子に

書誌情報

  • 論文タイトル:“ABC proteins in evolution”
    (参考訳:ABCタンパク質と生物の進化)
  • 著者:Fumihiko Ogasawara, Atsushi Kodan and Kazumitsu Ueda
  • FEBS Letters|DOI: 10.1002/1873-3468.13945/jacs.0c04955

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